研究課題/領域番号 |
19K01104
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
井出 浩正 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (20434235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 縄文時代 / 縄文土器 / 容量計測 / 民族学 / 民族事例 / 土器製作 / 社会交流 / パプアニューギニア |
研究実績の概要 |
当該研究は、A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化、B:CADによる3次元データ化と容量計測、B:資料調査 (実見観察)、C:民族学的手法による土器の交換および贈与と集間交流の調査の大きく3つの研究スケジュールから構成されている。これまでと同様に、2022年度は世界規模の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって、研究環境が激変したこともあり、研究そのものへの大きな影響と計画変更が余儀なくされる状況に至っている。 2022年度は、我が国全体においては新型コロナウイルスの終息を見据えた経済活動や日常生活への取り組みが行われつつあったといえるが、第6波に伴う「まん延防止等重点措置」(2022年1月9日~3月21日)や同年7月~10月にかけての第7波などの影響によって、流行地域からの人の移動や、接触を配慮すべき事態にあった。そのため、B:資料調査 (実見観察)においては、他機関への資料調査、実地調査等を当初の計画通りに実施することが困難であった。 上記のような環境下ではあったが、A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化、B:CADによる3次元データ化と容量計測を進めた結果、研究課題に即した研究論文を2022年度内に執筆し公開することができた。また、研究対象とする地域内で研究課題に即した講演会を行い、当該研究の現状と展望を一般に向けて公開することができた。Cにおいては、昨年度同様、渡航予定が立たない中にあって、既存の調査データの公開と活用に向けた検討を行い、これまでの調査成果を踏まえた報告書(研究者一般向けの頒布図書)刊行に向けた原稿の執筆と編集作業を継続した。その結果、おおむね編集作業を終えて、2023年度内に刊行される予定で調整している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化については、個人裁量の範囲で資料の集成とデジタルデータ化と分析を行い当該研究課題に即した論文を作成し公開した。そのため、(2)おおむね順調に進展していると判断できる。 B:CADによる3次元データ化と容量計測とB:資料調査 (実見観察)のうち、前者はAと同様に個人裁量の範囲で計測を進めることができた。一方、後者は第6波に伴う「まん延防止等重点措置」(2022年1月9日~3月21日)や同年7月~10月にかけての第7波などの影響によって、流行地域からの人の移動や、接触を配慮すべき事態にあった。そのため、他機関への資料調査、実地調査等を当初の計画通りに実施することが困難であった。両者を鑑み、(3)やや遅れていると判断した。 C:民族学的手法による土器の交換および贈与と集間交流の調査については、新型コロナウイルスならびに、調査対象地の治安状態が懸念される中、依然として渡航の目途が立たない状況にあった。そのため、研究代表者が過去に参加した早稲田大学のパプアニューギニアにおける民族調査の総括報告書の作成に取り組むことに研究方針を改め、当該報告書の分担執筆と編集を担当している。現在、当該報告書が2023年度内に刊行されるように各種作業と調整を進めており、(2)おおむね順調に進展していると判断できる。 以上を踏まえ、一部にやや遅れが認められるものの、研究課題全般としては(2)おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究は、A:中期集落遺跡出土土器の集成とデジタルデータ化、B:CADによる3次元データ化と容量計測、B:資料調査 (実見観察)、C:民族学的手法による土器 の交換および贈与と集間交流の調査の大きく3つの研究スケジュールから構成される。 Aは、2022年度の成果を踏まえ、引き続き、研究代表者が所属する組織内に設置された施設内で、対象地域の発掘調報告書等の悉皆的な調査を継続する。 Bは、Aで得られた知見 をもとに、CADを用いた容量計測を行う。2022年度に研究論文を通じて公開した成果に加え、追補的な知見をもとに、データベース化を進める。また、新型コロナウイルス感染と拡大の防止に十分配慮しつつ、関東地方を中心に他機関が所蔵する資料の実見を行いたいと考えている。 Cは、新型コロナウイルスの影響や、調査対象地の深刻な治安状態の懸念から渡航を断念し、2021年度から日本国内にあるパプアニューギニア関連資料の実見観察や見学、民族事例が掲載された文献調査等、渡航調査の代替的な研究に置き換えて実施している。現在、研究代表者が過去に参加した早稲田大学のパプアニューギニアにおける民族調査の総括報告書の編集作業の段階にあり、2023年度内の一般頒布本を刊行予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】2022年度は、我が国全体においては新型コロナウイルスの終息を見据えた経済活動や日常生活への取り組みが行われつつあったといえるが、第6波に伴う「まん延防止等重点措置」(2022年1月9日~3月21日)や同年7月~10月にかけての第7波などの影響によって、流行地域からの人の移動や、接触を配慮すべき事態にあった。そのため、特に、B:資料調査 (実見観察)において、他機関への資料調査、実地調査等を当初の計画通りに実施することが困難であった。 また、海外渡航を伴う調査(パプアニューギニア)においては、2019年度においてはパプアニューギニアの治安上の問題から、2020年以降は新型コロナウイルス(COVID-19)による海外への渡航制限によって事実上、実施が極めて困難な状況になっている。そのため、上記で予定していた研究およびそのための諸経費が余剰となり、次年度使用額が生じた。 【使用計画】令和5年5月8日からの新型コロナウイルスの「5類感染症」への移行を踏まえ、調査対象地域の自治体との調整を前提に国内の資料調査の再開を予定している。また、海外渡航(パプアニューギニア)を伴う調査においては、これまでの成果報告書の刊行を前提に、国内調査に方針を転換する。具体的には、海外渡航費を国内のパプアニューギニア関連資料の実見観察、見学、文献等の購入費に充てたいと考えている。
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