本研究では、12世紀から15世紀の中国陶磁器の流通と消費の状況に関して、中国と日本における消費地遺跡の出土状況から類型化とそれらの通時的・空間的比較を行うことを目的として研究を進めた。 調査研究は主に1)中国における南方産陶磁器の集積地と消費地遺跡、2)日本における中国南方産陶磁器の消費地遺跡での出土品を中心に進める予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していた中国や日本国内各地での調査を行うことができない状況が発生した。そこで予定を一部変更し、3)江戸時代以前に日本に舶来したと考えられる中国陶磁器の出土品と伝世品も研究の対象に加えて、舶来した後にどのように後世に引き継がれ、使用・評価されてきたかについて研究を行った。 2023年度には延期していた中国調査を対象地域を山東にしぼり実施した。その際、近年の水中考古学の進展に伴い発見された資料、墓地や港湾遺跡出土資料について実見を行った。また1)では中国の華北地域から東北地域の墓地・港湾などの遺跡出土の南方産陶磁器や編年や流通を考える上で有効な沈没船資料についても継続して集成を行い、各時代で流通した製品の特徴についての整理を進めた。その成果の一部は第43回日本貿易陶磁研究会研究集会(2023年9月16・17日)における研究発表などでも報告を行った。2)では発掘報告書をもとに集成を中心に行い、これまで実見調査を行ってきた京都、福岡などの資料の整理を進めた。3)は江戸時代において出土する12世紀から15世紀に加えて16世紀・17世紀代の中国陶磁器、また日本国内の美術館・博物館に所蔵されている関連作品との比較を通して、中国陶磁器の受容とその後の展開について研究を進め、一部は国際学会等でも研究報告を行った。 それぞれの研究の成果は、学会における口頭発表ならびに学術論文として報告を順次行っている。
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