研究課題/領域番号 |
19K01113
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
槙林 啓介 愛媛大学, アジア古代産業考古学研究センター, 准教授 (50403621)
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研究分担者 |
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 考古学 / 浜堤 / 製塩 / 瀬戸内海 |
研究実績の概要 |
2年目の2020年度では、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、予定していた実地調査のほとんどの計画を変更せざるを得なかった。しかし、そのなかでも調査および分析の結果を出すことができ、また今後の見通しを得ることができた。 愛媛県上島町佐島の宮ノ浦遺跡II区では、小規模ながら第10次発掘調査を実施し、遺跡最下層において花崗岩の基盤層を検出した。これにより、浜堤堆積と考えていた下層はこの花崗岩の風化堆積層である可能性が高くなった。第8次発掘調査時にII区9トレンチで柱状サンプルした土壌を用いて、浜堤堆積と花崗岩風化堆積との区別ができるかどうか、自然科学分析を行った。結果、構成物質や粒度などにおいて、両者に明確な差異が見いだせないことが分かり、浜堤堆積の性状の解明に課題を得た。同町弓削島の島尻遺跡では、13世紀末頃から15世紀頃の浜床と考えられる硬化面が検出されている。古航空写真による地形観察や発掘調査の結果から硬化面は浜堤上に造成された可能性があり、今後、さらに下層の調査が必要である。 1万年前の関東地方の縄文貝塚を始め、縄文時代の関東および九州の貝塚の分析を行った。浜堤に立地する貝塚からも製塩に関連する微小貝類は抽出できず、微小貝から想定できる製塩は広範囲かつ普遍的には行われていなかった可能性がある。瀬戸内島嶼部に限らず、浜堤が多く形成される日本列島において、このことは浜堤の地形環境と海に関わる人間活動との関係を検討するうえで重要との知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目2019年度に上島町佐島、弓削島、岩城島の各地点での塩田跡と関連遺構および堆積状況についての基礎資料を得たことで、本年度は当初、各地点の分析を実施する予定であった。新型コロナウィルス感染症拡大によりフィールド調査の実施に制限がかかったことは進捗に大きな影響を与えた。こうした状況下、自然科学分析を行ったのは、宮ノ浦遺跡II区9トレンチサンプリング試料のみであった。しかし、浜堤堆積物と風成堆積物の比較だけでなく、基盤風化層との比較もできたことは想定を上回る成果であった。また、弓削島島尻遺跡などで次年度も継続発掘調査を行う見込みであることから、当初予定のサンプリングと分析も実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、ひきつづき上島町佐島宮ノ浦遺跡と弓削島島尻遺跡での調査を予定している。とくに島尻遺跡では浜堤堆積物等の分析のためにサンプリングを行い、分析を進める予定である。また、浜堤と遺跡の形成について、瀬戸内海島嶼部の遺跡を中心に総合的検討を進め、本科研の成果につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大によりフィールド調査の実施に制限がかかったことは進捗に大きな影響を与え、次年度に実施計画の変更を余儀なくされた。しかし、上島町弓削島の島尻遺跡では次年度も発掘調査をする予定であり、土壌等のサンプリングと分析ができる見込みである。また、当初予定していた瀬戸内海島嶼部の踏査についても次年度に見送りことになり、その旅費等を次年度に使用することとする。
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