研究課題/領域番号 |
19K01114
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齋藤 瑞穂 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (60583755)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 弥生時代 / 青銅器時代 / 初期鉄器時代 / 三韓時代 / 土器型式 / 日韓交渉 / 渡来人 |
研究実績の概要 |
渡来人の足取りの解明をめざす本研究では,渡来した人々が作り伝習した土器の軌道と,九州在来の人々が作り伝習した土器の軌道とをそれぞれ明確にし,かつ,その両軌道の関係を解明することが重要である。2020年度は,水稲農耕がもたらされた弥生時代開始期と,「国産」青銅器生産の始まった弥生時代中期の土器系譜と軌道を明らかにした。 まず,弥生時代開始期(早期~前期)については,必ずしも明瞭とは言えなかった板付I式の内容と上下限を再定義したうえで,その成立に関わる人々の動態を分析した。結果,二様の伝習軌道が併存し,それが融合することによって同式が成立した可能性が高いこと,融合の有無が板付式と礫石式の違いの要因であることを突き止めた。あわせて,黒土原式と「夜臼式」,礫石式と「夜臼式」・板付式との併行関係の整理を行った。板付I式は礫石(中)式と接点をもつ。 なお,壺形土器の成立などこれまでの研究で渡来的要素として扱われてきた点については,若干検討の余地があり,「夜臼式」と渡来した人々との関係はさらなる検討が必要である。すでに指摘されているが,朝鮮半島から以外にも玄界灘沿岸に「渡来」した人々がいることは確実である。 また,三角形粘土帯土器の出現年代にあたる弥生時代中期については,「須玖式」に関するこんにちの参照枠が1980年代に相次いで提出され,以来用いられてきた。近畿地方や韓半島でも出土が知られ,人的交流や貿易を解明に導く一級資料であるが,しかしながら,そもそも認定自体に問題を孕み,結果的に相当のズレが生まれてしまっている。そこで代表的な論者の説を点検して,ズレの実態を視覚化し,次いで精製土器に焦点をあてて再構造化に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画に基づいて,本年度は,重要な時期の1つである中期の在来土器の検討を完了し,また,早期~前期前半代についても新たな知見を得ることができた。その一方で「無文土器系」の軌道を解明するための基礎調査が,新型コロナウィルス蔓延の影響により実施できていないため,(3)の区分となった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までに得られた知見のうち,論文化に到ってないものについては2021年度中に成果公表する予定である。一方,「無文土器系」土器の分析に関わる調査は,今後の感染状況を見つつ,タイミングを見計らって実施する心算である。残りの2か年で研究のスケジュールを調整しつつ遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が残額として残ったが,次年度請求分に含めて使用する予定である。
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