渡来人の足取りの解明をめざす本研究では,2022年度も引き続き,水稲農耕がもたらされた弥生時代開始期と,「国産」青銅器生産の始まった弥生時代中期に焦点を当てて研究を行った。関連する資料の調査を4月16日,6月25日,7月23日,9月3日,10月29日~30日に,福岡市埋蔵文化財センターや志摩歴史資料館,九州国立博物館などで実施した。 まず,弥生時代開始期については,いわゆる「江辻SX-1」の後から板付Ⅰ式前夜までの土器様相を整理することにより,朝鮮半島からの人々の渡来と,東日本からの人々の渡来の関係が判明するに至った。これまでの研究では,この間を3つの段階を設けることで理解につとめてきたが,これを細別し5つの段階とすることで前後がスムーズに繋がる。この成果は投稿済みで,5月に刊行される予定である。 また,三角形粘土帯土器の出現年代にあたる弥生時代中期については,「須玖式」に関する再構造化を進め,東入部(古)・(新)式,須玖Ⅰa~Ⅰe式,須玖Ⅱa~須玖Ⅱd式の諸式からなる細別編年案を発表した。この編年により,いわゆる「金海式」をはじめとする甕棺の年代,福岡平野における鋳造鉄器の出現年代に大幅な見直しが必至となる。それにより,倭百余国が管掌した対外交易の展開が大きく見直されることとなる。また,この時期の福岡平野では,周囲の自然環境も大きく変化していることが判明した。このことについては,さらなる検討を進めていく予定である。
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