研究課題/領域番号 |
19K01115
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片桐 千亜紀 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (70804730)
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研究分担者 |
菅 浩伸 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390)
坂上 憲光 東海大学, 海洋学部, 教授 (20373102)
小野 林太郎 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (40462204)
渡辺 美季 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60548642)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イギリス沈没船遺跡 / レディー・イブリン号 / 苦力貿易 / Lloyd's Register / 座礁・沈没海域の特定 / 海底遺跡マップ / 花崗岩石材の再利用 / 海底調査 |
研究実績の概要 |
2022年度はこれまでの3年間の調査で明らかとなった遺跡の核とも呼べる船そのものが座礁・沈没したと考えられるリーフエッジの海域での潜水調査を実施した。そこは、イギリス船に積載されていたと考えられる多量の花崗岩石灰岩、イギリス船の外板に張られていたと考えられる銅板や銅釘が高濃度に散乱する海域であった。これら花崗岩石材や船体の一部の分布状況を記録するため、GPSで位置座標を記録し、そのサイズや方向、現状の写真を記録した。また、フォトグラメトリによって遺跡の状況を示す3Dモデルを作成した。 さらに、宮古島市教育委員会と共同で地元住民を対象とした「イギリス沈没船遺跡体験学習会」を開催した。 繰越を含めた4年間の調査によって、宮古島吉野海岸の海底には巨大な方形花崗岩石材が、海岸の浅い珊瑚礁内に約50点が広く散布し、リーフエッジの深場には約100点が密集して散布していることを明らかとした。このことはリーフエッジの深場付近が船の座礁・沈没地そのものであることを示している。そして、浅い珊瑚礁内に広がる花崗岩石材は沈没地から波の力など自然の営為によって海岸に向かって広がっていった結果であることも明らかとした。 また、この花崗岩石材は島にない貴重な資源として過去には宮古島島民によって一部が引き揚げられ、石碑などに再利用されていたことも明らかとなった。さらに、文献調査によってこの異国船はイギリス籍であり、船名「レディ・イブリン号」であることも明らかとし、ロイズに登録されている船の保険に関する史料も入手することができた。聞き取り調査では、船の沈没後に船員の死体が漂着した海岸なども明らかとなった。 4年間をとおし、地元である宮古島市教育委員会との共同で宮古島郷土研究会で発表を行ったり、展示会や地元民を対象とした体験学習会なども実施し、水中遺跡公園化に向けた基礎的な土台が構築できたと言って良いだろう。
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