研究課題/領域番号 |
19K01116
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
遠藤 英子 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (60766947)
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研究分担者 |
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
那須 浩郎 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (60390704)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キビ / ウクライナ / ユーラシア / 農耕拡散 / 紀元前2千年紀 / ステップ / レプリカ法 / 炭素窒素同位体比分析 |
研究実績の概要 |
東アジアで栽培化され中央アジアを経由して青銅器時代以降にヨーロッパまで到達し、主要な栽培穀物に加わったと予測される雑穀(キビ・アワ)の、ユーラシア拡散の時期や経路を検討するため、その有力な拡散ルートと考えられる黒海北側ステップ地帯をフィールドとして調査・分析を実施している。 その方法論は、種子同定の確実性が高い土器圧痕同定法であるレプリカ法と、雑穀が持つC4植物という特性を生かした炭素窒素同位体分析が中心となる。またこれまでは穀物の時期を圧痕検出土器の土器編年により推定してきたが、同定穀物のより詳細な時期比定のために、土器付着炭化物のAMS年代測定を実施することとした。 しかしながら2019年秋のウクライナ国立アカデミー考古学研究所での調査を最後に、コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻により計画していた現地調査は全く実施できていない。そこで2020年からは、既に2019年の調査で採取済みの土器付着炭化物や人骨・動物骨サンプルのAMS年代測定と炭素窒素同位体分析を前倒しで実施し、2022年度末までに全サンプルの測定を終了した。本年度はそれらのデータを分析して論文を国際誌に投稿するため分担研究者と共に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年10月の現地調査を最後に、コロナ禍によりウクライナへの渡航が叶わず調査はストップしていたが、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻により、現地の共同研究者の調査研究も全く実施できない状況にあり、研究の進捗は著しく遅れている。現地の協力研究者は現在、自宅を破壊されドイツに避難するなど深刻な状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2021から2022年にかけて、Usove Ozero遺跡出土土器から採取した土器付着炭化物17点、Usove Ozero遺跡やNovokyivka遺跡など8遺跡から採取した人骨・動物骨23点を対象に、AMS年代測定と炭素窒素同位体分析を実施した。測定は東京大学総合研究博物館年代測定室との共同研究として実施した。 この地域の年代測定の課題として、人骨は海洋(or淡水、石灰岩地帯)のリザーバー効果で古くなっている可能性が想定されるため、動物骨(1点がヤギで、残りはウマ)の年代を参考に分析を進める方針である。現状では、Usove Ozero遺跡が約3400~3100BP、Novokyivka遺跡が約3100~2900BPの時間幅を持つと予測される。この結果とすでに同定結果の出ている穀物データを擦り合わせながら、黒海北側地域での後期青銅器時代の農耕拡散状況を分析したい。 また同位体分析は雑穀利用の指標となるC4シグナルの検出を目指して実施したが、何の遺跡からも明確なC4植物利用の形跡は見られない。雑穀は伝播・利用していたものの、生業におけるその割合は低かったとも解釈できるが、今後分析・検討を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたウクライナでの現地調査が実施できなかったため。
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