研究課題/領域番号 |
19K01122
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
青柳 泰介 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 係長 (60270774)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 馬 / 塩 / 鍛冶関連遺物 / 木製馬具 / 製塩土器 / 馬遺存体 / 手工業生産 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古墳時代の近畿地方における馬(ウマ)と塩の関係を明らかにすることである。馬(ウマ)にとって塩はなくてはならない重要な物資だが、従来は馬(ウマ)と塩に関する研究は個別に進められてきた。両者の関係については、一般的には飼料と解釈されてきたが、本研究では両者を複合的にとらえ、多様な関係性を明らかにしていきたい。なお、両者の関係には地域性がみられるので、本研究が馬匹生産のルーツや伝播過程について考えるきっかけになるとも期待している。 本年度は、①昨年度に実施した近畿地方における古墳時代~飛鳥時代の馬遺存体、および製塩土器の集成表の補足、②コロナ禍で出張に行けなくなった分、新たに基礎資料の充実をはかるべく、奈良県天理市の布留遺跡における古墳時代の製塩土器・鍛冶関連遺物(ウマを考える上で重要なウェイトを占めるので、塩以外に新たに追加)の台帳作成・分類・計測・実測作業を実施、③各種研究会(古代の馬研究会、東アジア馬文化の研究会、蔀屋北遺跡研究会など)に参加し、意見交換を実施、④新たに木製馬具の調査(奈良県田原本町の十六面・薬王寺遺跡、香芝市の下田東遺跡など)も実施した。 以上より、本年度は、馬と塩の関係を探るべく、それぞれの基礎資料の蓄積と意見交換を実施し、成果報告へ向けての準備をすすめる一方、当初予定していた東日本や韓国への調査を、コロナ禍のため断念し、近畿地方周辺の資料の充実に努めた。その結果、馬と塩は、鍛冶関連遺物や木製馬具とも共伴する確率が高いことがあらためて分かった。このことは、馬匹生産が各種手工業生産と連関した複合産業である可能性が高いことを示しており、大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
馬遺存体や製塩土器の集成補足、布留遺跡の実態調査等は実施できたが、東日本や韓国への本格的な調査や、シンポジウム等は実施できなかった。そのかわり、奈良県内を中心とした近畿地方の調査を充実させ、馬と塩の関係性だけではなく、各種手工業生産とのかかわりをも明らかにできたので、新たな方向性を提示できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もコロナ禍が長期化することが予想されるので、東日本や韓国での実態調査、およびシンポジウム等は断念し、その分、奈良県内を中心とした近畿地方の実態調査、および成果報告書を充実させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が中途半端な金額になってしまったため、次年度に繰り越し、報告書刊行に伴う諸経費で使用する予定である。
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