東アジアの木彫像(仏像や神像)ならびに茶室建築に注目し、それらの国や時代によって変化してきた用材観の解明に向けて従来の樹種識別手法に加えて申請者らが開拓してきた非破壊の樹種識別手法(μCTなど)などを駆使することで用材の大規模なデータベースを構築し、美術史、宗教史、建築史に欠けてきた科学的知見の獲得を進めてきた。 コロナの影響が続き現地へ赴いての調査そのものは容易ではなかったが、国内や欧米の複数の美術館の学芸員らと密接にコンタクトを取り、継続した研究を進めることができた。欧米の美術館との研究はもとより、特に日本国内の中でも特に山陰地方をはじめとした地域の木彫像調査を推進することができた。山陰地方のうち出雲に関しては、仏像篇の研究成果を紀要として出版することができ、継続して2024年度には神像篇が出版予定である。特に、これまで解明されていなかったモクレン属による造像の歴史を追い求めるため、人文学的視座からの研究にも邁進できた。現在、人文学系の国際誌へ投稿準備中である。 茶室建築における樹種調査では、論文を投稿準備中である他、茶室の用材観などをまとめた論文も、準備中である。今後も継続した深みのある研究にむけて努力したい。 2022年8月にはこれまでの研究成果を掲載した単著を出版したが、産経新聞・日本経済新聞・朝日新聞・読売新聞・地方誌・神社新報で書評などが紹介され重版となった。中学受験用参考書に本書籍が引用された他、2024年度の大学受験の国語にて引用されるなど、年代を問わず、社会へむけて研究成果の周知ができたと考えている。また、講演依頼が増えたことで、社会に向けた研究成果の周知につながったと考えている。継続して、研究に邁進したい。
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