研究課題/領域番号 |
19K01131
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
久間 英樹 松江工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (40259924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺跡調査 / 3次元レーザ測定 / 不整地対応ロボット |
研究実績の概要 |
これまでの研究では、3次元レーザスキャナを用いて坑道が散在する斜面形状を測定して、採掘時の坑道周辺の様子や坑道の位置関係を明確にしてきた。また3次元レーザスキャナを搭載したロボットを用いて坑道内を測定して断面形状、採掘方向、傾斜角、採掘体積等の定量データを取得した。これら定量データから時代毎の坑道形状の特徴を推定することが可能となった。この手法を用いて全国各地の鉱山遺構や坑道内の調査を行ってきた。 その結果、測定範囲および重量の異なる2種類の3次元レーザスキャナを用いた「急峻地形に散在する採掘跡測定手法」を提案しその有用性を検証した。具体的には平成29年度に兵庫県猪名川町が従来の測量手法であるトータルステーションを用いて作成した「多田銀銅山民田地区坑道周辺分布範囲図」の坑口位置と、本手法を用いて求めた坑口位置が複数箇所で異なっていることを確認した。特に平均傾斜約50degの急峻地形に露頭掘から地中掘へ移行した採掘跡が散在する場所では有用であることがわかった。また坑道間の地中内相互関係を検討した結果、複数の坑道が地中内で繋がっていると推測できた。更に現在埋没している坑口が地表のどの部分に位置していたか推測することも可能となった。 また、坑道内でのロボットを用いた3次元レーザ測定をより円滑に進めるために坑道形状に対応したロボットを製作できないか検討した。具体的には従来開発してきた駆動用DCモータを内輪と兼用したホイールで覆ったインホイール駆動ユニットをベースに、このユニットを複数個組み合わせることによって多輪型のロボットを製作した。また坑道内でロボットが横転した際にも探査が続行できるような機構を追加した。更に坑口周辺の3次元レーザ測定を効率的に実施可能となる軽量・小型3次元レーザ測定機の開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り全国各地(兵庫県多田銀銅山、因幡銀山、中瀬金山、奥山金山、新潟県佐渡金銀山、秋田県尾去沢鉱山、山梨県湯之奥金山等)の鉱山坑道跡および周辺地形の3次元レーザ測定を行っている。またこれまで時間を要していた坑道周辺の急峻な地形の測定のために軽量・小型3次元レーザスキャナの開発も行っている。この試作機を用いて各地で3次元点群データの収集を行っている。 また実施期間を通して埋蔵文化財としての鉱山遺跡の価値を再認識してもらうために、兵庫県多田銀銅山や山梨県湯之奥金山の鉱山跡で成果報告会を行った。その際、実際の坑道調査に使用した遠隔操作型ロボットの実演や操作体験も実施した。更に、子供たちに「ものづくり」の面白さを体験してもらうために、探査ロボットを模した「オリジナルミニュチュア工作キッド」を開発し工作教室を実施した。これにより坑道内に散在している岩石をどのように回避してロボットを用いた調査を行っているか体験してもらい「ものづくり」の楽しさと難しさを理解してもらっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は測定地域を広げていく。また得られた3次元レーザ測定結果と地域に保存されている古文書や絵図の記載と比較検討を行う。これにより鉱山坑道開発の歴史的変遷を解明する。また本年度は測定対象となる坑道内形状に適した多輪型ロボットを複数台開発する。これらを用いて、採掘年代が絵図や古文書等である程度確認できる坑道の定量データを構築する。更に、坑道内3次元形状データや周辺地形との相互関係等、鉱山関連遺構全体の3次元データを採掘年代推定の指標として使用できないか検討しする。そのために昨年度開発した「急峻地形に散在する採掘跡測定手法」を応用することで、坑道付近の地形、選鉱道具、鉱山臼等、鉱山関連遺構の定量データを現場で効率良く測定できるシステムを構築する。この結果を用いて鉱山稼働時の採掘状況や鉱山遺跡の文化的価値を定量的に評価可能となる手法も検討する。 本年度の新たな試みとして坑道周辺の地形測定に3次元レーザスキャナを搭載したドローンを使用することが可能か検討する。具体的には、従来危険なため地上からの測定が困難であった急斜面や崖地の測定が可能か検討するためである。しかしながら飛行中のドローン本体の振動が3次元レーザスキャナの測定に影響が生じることは明白である。そのため振動防止機構を新たに開発しドローンに搭載して対処する考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に発表を予定していた2つの学術学会が「コロナ禍」により中止になった。これにより科研費で旅費支出を予定していた額が残金となった。
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