研究課題/領域番号 |
19K01141
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
尾久土 正己 和歌山大学, 観光学部, 教授 (90362855)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヴァーチャル・リアリティ / ドームシアター / 博物館資料 |
研究実績の概要 |
8Kは資料を詳細に記録できるメディアとして、またVRは実体験が困難な資料を仮想空間に再現できるメディアとして博物館関係者から注目されている。これらを組み合わせた8Kを超えるVRでは、視覚情報的には実物の資料との差を感じなくなる可能性も考えられる。そこで、本研究は、8KVRシステムを構築して、博物館資料の記録、展示を行うとともに、「究極のVR映像ができたときに、展示資料は映像で置き換えられるのか?」という学術的な問いに答えるものである。また本研究は、研究代表者らが提案し採択された、内閣府のオリンピックのレガシーの1つである「新・臨場体験映像システム」の実証実験としてオリンピック組織委員会が計画する「臨場感LIVEビューイング」を研究フィールドにするものである。 初年度は、8Kを超える映像の撮影・投影のシステムの構築、VRで一般的に活用されるヘッドマウントディスプレイとの差異を明らかにした。当初の予定では2年目には、オリンピックでの実証実験を行う予定であったが、コロナ禍のために延期になったために、サンプル映像を用いて、実験会場の1つである日本科学未来館のドームシアターを使っての伝送及び投影実験を行った。また、オリンピック以外の有形無形の資料の高精細VR資料化として、和歌山大学観光学部と連携協定を結んでいる鹿児島県与論町の珊瑚礁の海や星空などの自然、国の重要無形文化財の十五夜踊りなどをドーム映像化したり、日食映像を中継したりした。この映像をもとに、11月に与論町で開催予定であった「星空の街・あおぞらの街」全国大会の会場にドームシアターを設置し、多くの島内外の参加者を被験者に評価実験を行う準備を進めていたが、全国大会がコロナ禍で中止になったため評価実験は完了していない。以上のように、2年目は、コロナ禍のために、伝送実験の準備や資料の制作は進んだが、評価実験ができないままである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付決定時の計画では2年目に本研究の中心的な実験であるオリンピックをVR映像化し各地のドームシアター(プラネタリウム館)で生中継し、その評価を行う予定であったが、コロナ禍のために、2年目開始前に、オリンピック関連の実験を3年目に行うように変更していた。その代わりに、先に、オリンピック以外の被写体を使って、展示映像を作成し、評価実験を行う計画であった。研究実績の概要でも述べたように与論島の有形無形の資料をドーム映像の形で展示資料として制作したが、それをドームシアターで公開し、評価する機会がコロナ禍のために失われてしまった。なお、学内のドームシアターでの評価実験も行わなかった理由は、学内のドームシアターが直径5mという閉所空間で感染リスクが高いと判断したため実施しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
交付決定時の研究計画では、2年目の2020年度は東京オリンピック・パラリンピック大会でのVR映像の撮影と評価実験をして、最終年の2021年度は、それまでに制作した自然、歴史等のVR映像が実物とどれだけ違うかを人間工学や感性工学の手法を使って評価実験する計画になっていたが、オリンピックの延期、閉所空間での実験の自粛のため、撮影、評価実験ともに遅れている。そこで、最終年度である今年度は、前半は7月のオリンピックのVR映像化とその評価実験に当て、後半に昨年度制作した与論島の自然や民俗をテーマに制作したVR映像の評価実験を行い、これらをまとめて論文を執筆する。万が一、オリンピックが開催中止になった場合は、与論島のVR映像だけで評価実験を行い、当初の目標であった「究極のVR映像ができたときに、展示資料は映像で置き換えられるのか?」について結論を導きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために2020年度に予定していた撮影、実証実験が延期になったため、2021年度にオリンピック期間を中心に実験を撮影、伝送、投影、評価実験を行う。
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