本研究は、8KVRシステムを構築して、博物館資料の記録、展示を行うとともに、「究極のVR映像ができたときに、展示資料は映像で置き換えられるのか?」という学術的な問いに答えるものである。また本研究は、研究代表者らが提案し採択された、内閣府のオリンピックのレガシーの1つである「新・臨場体験映像システム」の実証実験としてオリンピック組織委員会が計画されている「臨場感LIVEビューイング」を研究フィールドにするものである。 当初、2年目(2020年)にオリンピックをフィールドに実験を実施し、最終年度でデータ処理や解析、論文化を予定していたが、コロナ禍のためにオリンピックが延期になり最終年度(2021年)に、「臨場感LIVEビューイング」の実験を行うことができた。しかし、コロナ禍での実験になったため、会場は無観客になったことで、遠隔地のドームシアター(プラネタリウム館)の参加者が会場の観客と一緒に応援することができなくなったり、そもそもドームシアターに参加者を集めて実験を行うことに感染の危険性を感じた複数の自治体が直前で実験を中止したり、関係者のみの上映実験になったりと、当初予定していた規模での実験を行うことはできなかった。結果的に、全国のプラネタリウム施設8会場で969名の参加者を集めた実験を行うことができた。この実験では、開会式を含むオリンピック競技という無形文化財を臨場感のあるVR映像としてリアルタイムや録画で全国の博物館施設のプラネタリウム館に配信し上映するシステムが構築できたこと、また、ドーム径やプロジェクターの明るさなどのスペックの違う各施設で実験できたことから、ドームシアターのハードウェアのスペックの違いによる臨場感の差などを明らかにすることができた。なお、参加者のコンテンツ(今回の場合はスポーツ)に対する興味関心と臨場感の関係は今後も分析を継続し明らかにしていきたい。
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