研究課題/領域番号 |
19K01147
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研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
斎木 健一 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (40250055)
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研究分担者 |
下稲葉 さやか 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (00761545) [辞退]
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
奥野 淳兒 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (60280749)
伴 光哲 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (10847932)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学校標本 / 生物教育史 |
研究実績の概要 |
本研究の主要な目的は、学校に収蔵されている自然史標本を調査し、その実態と重要性を明らかにした上で、標本の保存と活用をはかることであり、その目的達成のためにマニュアル作製と企画展示の開催を計画した。学校に収蔵されている自然史標本の実態については、千葉県等の高校19校を調査した。標本は、さく葉標本、液浸標本、昆虫標本、剥製等、多岐にわたったが、教科書での取扱量が多い、剥製について論文としてまとめた(斎木・黒住2023)。 この論文(斎木・黒住2023)での分析対象は、十分な数の標本が残されていた14校で、以下の5点が明らかになった。1)剥製標本が大量に購入された時期は 190年ごろから 1941(昭和 16)年ごろまでである.(2)1899 年から 1941年までの中学校動物学教科書では,掲載されている哺乳類および鳥類の目は,哺乳類 11 目,鳥類 8 目にほぼ固定されていた. (3)高等学校の剥製標本は,飯島(1890)の分類を網羅するように購入されていた. (4)剥製標本は,実物の観察を通して正確な観念を得るために導入されたが,実際には教科書の記述内容を目視により確認するために使用された. (5)1942年に行われた中学校教授要目の改正において,それまで目レベルで行われていた分類学的 な授業が綱レベルに変更された.このため,目ごとに剥製標本で形態を確認するような授業が行われなくなった. さく葉標本についても調査を行い、学校の所在する地域の標本が多く、地域の過去の植物相の解明に役立つ貴重なものが多く含まれていることを明らかにした(早川ほか2023)。 これらの結果を伝えるため、千葉県立中央博物館で企画展示「理科室のタイムマシン 学校標本」を開催し、会期中には講演会も2回開催して普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの流行により調査に遅れが生じたが、期間を延長したため、現在は今年度末の完了に向け、概ね順調に進展している。学校での標本調査と企画展示は終了し、標本マニュアルについても、現在原稿がほぼ集まった状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
当初目的のうち、未完了となっている標本マニュアルの作製とその普及に務める予定である。標本マニュアルには哺乳類・鳥類剥製、骨格標本、昆虫標本、さく葉標本、貝類標本、液浸標本についての草稿があつまり、編集作業中である。爬虫類、魚類剥製についての原稿が欠落しているが、これらの保存については先行研究が少ないため、掲載しない可能性もある。 調査の過程で、過去の生物部の活動を記録した「生物部誌」の重要性を確認することができた。生物部誌には、学校の所在する地域の生物相の記録が残されていることが多く、地域の過去の自然を知るうえで貴重である。しかし、生物部誌は出版物とは認められていないため、図書館等に保存されることもほとんど無く、多くが失われつつある。学校に残された標本の採集記録などが記されている例もあり、今後、調査と研究を進め標本マニュアルに加えるなどして、保存への動きを作り出していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、コロナ流行のため学校標本調査に著しい遅延が生じたため、計画全体が遅れ、研究期間を2024年度まで延長することとなった。このため、当該助成金が生じることとなった。翌年度分として請求することとなった助成金は、企画展示で借用した標本の返却および、研究計画にある学校標本マニュアルの印刷費として使用する計画である。
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