研究課題/領域番号 |
19K01152
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
石田 惣 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 主任学芸員 (50435880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然史標本 / 沖縄戦 / 標本記録 / 生息地推定 / 保全 / 科学史 |
研究実績の概要 |
2021年度(3年目)は前年度に引き続いて渡航制限が緩和されなかったため、アメリカ国内の博物館・公文書館での実地調査は断念し、(1)沖縄戦期標本の採集者や採集活動に関する文献調査、(2)沖縄産カワザンショウガイ科の標本調査、(3)沖縄地域の無脊椎動物の標本記録のデータベース化を行った。 (1)では、ウェブで公開されているスミソニアン国立自然史博物館の年報から資料受入記録を検索し、1945から1950年までに寄贈された沖縄関連の標本をリスト化した。また、同館に標本を寄贈した兵士が執筆・出版した戦中手記を探索し、沖縄島内での活動と標本ラベルの採集地・採集日との整合を行った。 (2)では、沖縄諸島で絶滅したとされているリュウキュウカワザンショウに焦点を当て、米海軍第2医学研究部隊(NAMRU-2)が沖縄戦で採集したカワザンショウガイ科標本、及び戦後に沖縄県内で採集された標本から同種の標本を探索した。NAMRU-2の標本については2019年に調査したスミソニアン国立自然史博物館標本だけでなく、ハーバード大学比較動物学博物館からも新たに標本借用して調査を行った。戦後の採集標本については琉球大学風樹館及び大阪市立自然史博物館の収蔵標本を調査した。その結果、リュウキュウカワザンショウと考えられる数ロットの標本を見いだした。 (3)では、大阪市立自然史博物館に収蔵されている主として未登録の沖縄諸島産無脊椎動物標本群を精査・整理し、各年代の生物相の基礎データとして整備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限のため、アメリカ国内での博物館収蔵標本及び資料の追加調査が行えなかった。また、スミソニアン国立自然史博物館の遠隔利用も2022年3月まで停止していたため、2019年に調査した標本のフィールドノートデータの探索も進めることができなかった。標本の同定作業、関連する文献調査については同様の制約があったものの、ある程度進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、次年度も渡米調査は難しいと予想される。スミソニアン国立自然史博物館の遠隔利用が2022年4月から再開したため、NAMRU-2のフィールドノートデータの探索依頼などを行うことを計画している。また、アメリカ国内の各自然史系博物館が公開している標本データベースを利用し、沖縄戦期の採集標本の探索を行うとともに、必要に応じて借用による標本調査を行う。当初は幅広い分類群で標本探索を行い、沖縄戦期標本の目録作成を行う計画であったが、収蔵庫調査ができない状況では難しいと判断される。そのため、ある程度分類群を絞り込んだ調査に方針を転換する。具体的にはNAMRU-2が重点的に調査・採集していた淡水・汽水性貝類に着目し、これらの標本情報をリスト化し、可能なものについては分布の再現を試みる。特に沖縄諸島で絶滅したとされるリュウキュウカワザンショウは既知の分布記録が著しく限られているため、これらの標本群が有用な情報源になる可能性がある。必要に応じて、標本資料を用いたこれらの系統解析を行うことも視野に入れている。 並行して、NAMRU-2の活動記録並びに沖縄戦兵士による採集記録の探索は引き続き行う。今後、渡航制限が解除され渡米調査を行う可能性も踏まえ、研究計画を1年間延長することも検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限のため、アメリカの博物館収蔵庫、及び公文書館への訪問調査を行えなかったことが最も大きい理由である。今後渡航制限が解除された場合は、現地の受入体制が整い次第訪問調査を行う予定であり、余剰額はその旅費として使用する計画である。引き続き渡米調査が難しい場合は、カワザンショウガイ科標本の探索及び系統解析に重点を置いた研究を進めることとし、余剰額はその経費に充てることとする。
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