研究実績の概要 |
2023年度(5年目)は以下の項目について調査を行った。 (1)ハーバード大学比較動物学博物館(Museum of Comparative Zoology, Harvard University)の標本データベースで沖縄戦時に採集された両生爬虫類の標本約290点の情報を抽出し、そのうちレッドリスト種、同定疑問種、及び比較的まとまった点数がある沖縄島本部半島産のものについて同館を訪問して標本調査を行った。これにより約250点の標本について種同定とラベル情報の確認を行い、標本リストを作成した。本部半島産の両生爬虫類標本は10科14種が確認された。 (2)米国立公文書館(カレッジパーク)で米海軍医学研究第2部隊(Naval Medical Research Unit No.2)の太平洋戦争時の活動を記録した公文書を探索し、部隊員名簿、作戦日誌、調査報告書、記録写真等約150点の文書(計約1700ページ)を複写し、文書リストを作成した。これにより、グアムを拠点として沖縄戦に展開した部隊の活動内容を概ね再現できる一次資料を得ることができた。また、沖縄戦戦術地図(AMS L-819)のうち、国内で所蔵する機関のない一部の図郭について複写を行った。 (3)沖縄産カワザンショウガイ属の系統的位置を推定するため、奄美大島及び種子島でのカワザンショウ属の分布調査とサンプリングを行うとともに、同属各種のトポタイプ(ヒラドカワザンショウ:長崎県平戸市、テシオカワザンショウ:福井県あわら市、カワザンショウガイ:東京湾)を採集し、MIG-seq法による集団構造解析の準備を進めた。 (4)沖縄戦時に採集された自然史標本のうち、軍による組織的な活動に拠らない標本採集の事例として米海軍建設工兵隊兵士Ralph J. Donahueの収集標本をリスト化するとともに、同氏の手記から沖縄島での採集記録を再現した。
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