研究課題/領域番号 |
19K01153
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伊藤 晶文 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (40381149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SfM-MVS |
研究実績の概要 |
2019年8月にUAV(DJI社 Phantom4)による空中写真撮影を行い,510枚の画像データを得た。同時に,Ashtech社製のProMark120を用いた高精度GNSS測量(後処理キネマティック法)を実施し,調査地域にランダムに設置した航空標識20点の位置情報を取得した。次に,取得した画像データおよび航空標識から選択した10点の地上基準点を用いて,SfMソフトウェア(Agisoft社Metashape)により,3次元の位置情報を持つ点群データを作成した。10点の検証点から得られた点群データの示す誤差(RMS)は水平方向および垂直方向ともに3 cm未満であり,高精度のオルソモザイク画像および数値表層モデル(DSM)が作成可能であることが分かった。また,2016年9月,2017年6月,および2018年6月に取得していたUAV撮影による画像データおよび高精度GNSS測量による航空標識の位置情報を用いたSfM処理も行ったところ,後二者の点群データが示す誤差(水平方向および垂直方向)が2019年8月とほぼ同様であったのに対して,前者のそれは45 cmを超えた。両者の違いが生じた理由として,画像データのファイル形式の違いと航空標識設置の有無とが考えられた。さらに,既存の国土地理院撮影の空中写真画像データ(2011年3月および5月,2012年10月および11月,2013年9月,2015年7月,および2019年4月)のうち,2013年9月についてSfM処理を行ったところ,今回使用した地上解像度20 cm程度の画像データからは,地上基準点(10点)における誤差で30 cm未満の点群データを作成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は,①既存の空中写真画像データを用いたDSMとオルソモザイク画像の作成と,②UAVによる空中写真撮影と設置した航空標識の位置情報の取得,およびそれらのデータを用いたDSMとオルソモザイク画像の作成を主に実施する計画であった。そこで,2019年8月にUAVによる空中写真撮影および高精度GNSS測量を実施するとともに,未所有であった既存の空中写真画像データの購入も行った。現在までに,2017年6月および2019年8月に取得したデータを用いて,約6cmの解像度と高解像度のDSMおよびオルソモザイク画像を作成することができた。一方で,予備調査でUAV撮影およびGNSS測量を実施した他の時期や,既存の航空写真画像データを利用したDSMおよびオルソモザイク画像の作成は未だに実施できていない。これらの作成が遅れた原因として,SfM処理に特化したPCの不具合が生じたこと,UAVの故障修理が生じたこと,そして作成できた高解像度の高密度点群データのうち,不要な点群データの除去作業に大幅に時間がかかったことが挙げられる。前二者については既に問題が解消されているものの,最後の点に関しては,当初の想定を大幅に超えることから,十分な作業時間の確保が必要であることが分かった。また,2019年度は複数時期のDSMおよびオルソモザイク画像を用いたGIS解析も並行して行うことを予定していたが,得られた情報が二時期と少なかったために実施していない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,既にSfM処理によって作成した高密度点群データのうち,不要な点群データの除去処理作業に重点を置き,研究代表者だけでなく研究補助アルバイトも含めて,作業時間のさらなる拡充を行う予定である。これにより,計画よりも遅れているGIS解析(地形解析および植生分布変化)の基礎的データであるDSMおよびオルソモザイク画像の作成を優先的に進めていく。また,過去の衛星画像(主にGoogle Earthを使用)を用いて調査地域の地形および植生の変化の概略を確認しながら,本研究を遂行する上で必要な(あるいは効果的な)基礎的データの取得時期を再検討するとともに,既に作成した点群データの解像度や精度の違い,さらに現地の復興工事に関連した改変状況を考慮しつつ,作成予定であったDSMおよびオルソモザイク画像の数あるいは範囲を絞り込む作業も同時に進めていく。さらに,国土地理院や海上保安庁など,公的調査機関が取得したDEMやオルソモザイク画像の提供依頼や,市販されている民間調査会社のオルソモザイク画像の購入など,既存データの収集および利用についても検討する。UAVによる空中写真撮影と航空標識のGNSS測量は2020年度も実施する予定であるものの,UAVの飛行が晴天で風速の弱いときに限られるだけでなく,2019年度は航空標識の設置や回収のための調査補助者を確保することも難しいために現地調査がうまく進められなかった。そこで,2020年度の調査状況によっては,研究代表者だけでも必要なデータが取得できる,航空標識の設置および測量が不要なUAVの購入も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた現地調査(空中写真撮影)に関連した費用について,UAVの故障修理や天候不順のために予定の調査日数を確保できなかったことから残額が発生した。また,これに関連して,予定していた現地調査補助に関するアルバイト費用に加えて,PCの不具合に伴うSfM処理作業の遅れから室内作業補助に関するアルバイト費用が少なくなったことでも残額が発生した。これらの残額については,2020年度の現地調査旅費や人件費・謝金への充当とともに,調査関連消耗品の補充等に使用する予定である。
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