研究課題/領域番号 |
19K01153
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伊藤 晶文 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (40381149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 陸域と海域を結合したDEM |
研究実績の概要 |
2020年度は,昨年度までに作成した高密度点群データのうち,不要な点群データの除去処理作業を重点的に実施した。その中で,2013年9月については,点群データ処理が終了し,地上解像度約20 cmのオルソモザイク画像および数値表層モデル(DSM)を完成させることができた。調査地域近傍の公共基準点6点を用いて,このDSMの精度(垂直方向)を検証したところ,誤差(RMSE)10 ㎝未満であることが分かった。さらに,これまでに入手していた既存のデータ(国土地理院より提供された2 m DEM(数値標高モデル),海上保安庁より提供された航空レーザー測量データ[約5 mのランダムデータ],および1:10,000海図[仙台塩釜港仙台])と上記DSMを用いて,津波前(2005年)および津波後(2011年,2013年)について,陸域と海域を結合したDEMを作成した。このDEMを用いたGISによる地形解析を行い,陸上だけでなく浅海底も含めた地形変化を定量的に明らかにし,調査地における海岸地形の変化の特徴を検討した。この成果については,2021年度に学会報告および論文投稿を行う予定である。なお,本研究に関連する研究成果として,2011年津波後の蒲生干潟の潟湖底・干潟堆積物から検出した珪藻群集を整理し,出現割合が3%以上の主要出現種は4属11種であること,そのうち2種を除く主要出現種は,浜堤平野において新たな浜堤形成に伴って河口付近に作られた初期の砂州―潟湖・干潟環境の指標種となる可能性の高いことを示した論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,2020年度には,UAVによる空中写真撮影と設置した航空標識の位置情報の取得,およびそれらのデータを用いたDSMとオルソモザイク画像の作成を実施する予定であった。しかし,昨年度の進捗状況をふまえて,2019年度実施予定であった既存の空中写真画像データを用いたDSMとオルソモザイク画像の作成を行い,2013年9月のDSMとオルソモザイク画像を完成させた。他の時期(2011年3月および5月,2012年10月および11月,2015年7月)については,画像へのGCPの設置が困難である点や作業時間の長さの問題から行わないこととした。また,2016年および2018年にUAVを用いて取得していたデータを用いて作成した高密度点群データの処理作業を進めている段階であり,今年度も引き続き実施する予定である。なお,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,2020年度は現地調査を実施しなかったため,UAVによる空中写真撮影と設置した航空標識の位置情報の取得はできなかった。 2020年度に実施予定であった,DSMおよびオルソ画像を用いたGIS解析については,実績に示したように,2013年までの地形変化の検討はおおむね終了している。昨年度に完成させた2017年および2019年のDSMおよびオルソ画像の解析から,植生変化と地形変化の対応関係の概要は把握したものの,2016年および2018年のDSMおよびオルソ画像の作成が終了したのちに,改めて詳細に検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,DSMおよびオルソモザイクの作成作業(特に,高密度点群データの除去作業)とGIS解析(地形解析および植生分布変化)を中心に行う。なお,今年度も,新型コロナウイルス感染症の影響は予測困難であり,研究補助アルバイト(現地調査補助を含む)が確保できないことも予想される。そこで,当初計画よりもGIS解析の基礎的データとなるDSMおよびオルソモザイク画像の数を絞り込んで実施する。また,今年度の写真撮影と設置した航空標識の位置情報の取得については,研究代表者だけでも必要なデータが取得できる,航空標識の設置および測量が不要なUAVを購入して実施する予定である。当初計画では,今年度から実施予定であった,堆積相解析,粒度分析および円磨度測定については,できるかぎり研究代表者だけ(あるいは補助者1名のみ)で断面測量や掘削調査などが行えるように工夫しながら進めていきたい。掘削調査については,当初複数人での調査・採取を検討していたものの,予察的なGIS解析から,当初予想していた深度よりも浅い範囲が対象になると考えられることから,ピット掘削および打ち込み型ハンディジオスライサーを用いた調査を主体とし,堆積相解析および試料採取を行うこととする。粒度分析については,ふるいを用いた分析を実施する予定であるが,作業時間を十分に確保できないと判断される場合は,他研究機関の所有するレーザー粒度分布装置を借用して実施することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,予定していた現地調査はすべて中止したために,旅費は使用しなかった。関連して,現地調査および室内作業補助に関するアルバイトも雇用しなかったために,人件費・謝金も使用しなかった。また,物品費については,当初,バイブレータ(打ち込み装置)を用いたハンディジオスライサーを購入する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響がどの程度続くのかが不透明であったため,購入を見送った。これらの残額については,現時点での新型コロナウイルス感染症の影響の不透明性および予察結果から,航空標識の設置および測量が不要なUAVと打ち込み型ハンディジオスライサーの購入に主に充てることにする。さらなる残額については,今年度の現地調査旅費や人件費・謝金への充当とともに,現地調査の手間や時間を減らすことのできるソフトウェアの購入や調査関連消耗品の補充等に使用する予定である。
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