研究課題/領域番号 |
19K01159
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
|
研究分担者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
大山 幹成 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (00361064)
佐々木 明彦 国士舘大学, 文学部, 准教授 (20608848)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 最終氷期最盛期 / 中部高地 / 森林限界 / 森林発達 / 花粉分析 / 大型植物化石 / 化石周氷河地形 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は最終氷期最盛期以降における長野県霧ケ峰・八ヶ岳一帯に広がる中部高地における森林限界の高度変化を復元するとともに,化石周氷河地形の分布や形成年代を明らかにして,最終氷期以降の森林発達の過程とそれに関わった要因を検討する。本年度は研究計画の2年目として,標高1,500m以上の地点における新規ボーリング試料を基にした植生復元を行うとともに,化石周氷河地形の形成年代の検討を行う予定であった。しかし,新型コロナ禍の緊急事態宣言による移動制限によって現地調査が行えなかった。そのため,研究分担者と相談の上で研究計画を見直し,既存ボーリング試料の探索を行った。その結果,中部高地周辺の新潟県小松原湿原(標高1,350~1,570m),長野県野々海湿原(標高1,050m)で採取したボーリング試料の提供をしてもらい,花粉分析・大型植物遺体分析を行った。これにより2021年度に予定していた標高1,000m付近の植生復元の結果を前倒し的に得ることができた。また,化石周氷河地形については,霧ケ峰・鷲ヶ岳周辺で地形調査を行った。その結果,標高1,550m付近を分布下限とする侵食小起伏面が分布することが明らかとなった。この侵食小起伏面は,周氷河環境で形成された周氷河性平滑斜面であると考えられるが,地形を構成する堆積物の確認はできなかった。本年度の成果は,中部高地一帯の山岳域における最終氷期最盛期以降の森林限界を時系列的に復元するとともに,地表環境の変遷史を構築する上で重要な成果となった。なお,これらの成果については,国内外の学会や研究会で随時公表したいと考えている。2021年度は標高2,000m付近における採取した新規ボーリング試料を基にして植生復元を行うとともに,化石周氷河地形を構成する堆積物の観察と,それに基づいた形成年代を明らかにすることで,地表環境の変遷史を詳細に明らかにしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように,本年度は新型コロナ禍よる移動制限で現地調査や学会発表など,当初予定していた研究計画の通りに進めることができなかった。そのため,遠隔会議を開催するなどして研究分担者と相談・協議し,本研究を延滞なく進め,確実に研究成果を得るためにも,既存のボーリング試料の探索をして,提供してもらうことにした。その結果,中部高地の周辺で得られた二つの湿原におけるボーリング試料を得ることができ,滞りなく分析を行うことができた。また,本年度の新型コロナ禍は研究計画の若干の変更を余儀なくされる未曽有の事態ではあったが,本年度に計画していた標高1,500m付近の植生復元,さらには次年度(2021年度)に予定していた標高1,000m付近の植生復元も実施することができた。そのため,当初の研究計画に沿ってはいないものの,研究目的は十分に達成していると判断されるため,(2)「おおむね順調である」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は新型コロナ禍の影響によって研究計画の変更を余儀なくされたものの,おおむね順調に研究目的を達成されつつある。より十分な研究成果をするためにも,標高1,500m付近と標高1,000m付近の両標高帯での新規ボーリング採取を行いたい。また,今年度は標高1,000m付近の湿原で機械式ボーリングを実施する予定であった。しかし,すでに長野県野々海湿原において機械式で採取された既存ボーリング試料を提供してもらうことできた。そのため,異なる標高帯での新規ボーリング試料の採取も検討したいと考えている。また,各種分析の作業量も増大すると予想されるため,実験補助者などを雇用して,分析結果のとりまとめに注力したいと考えている。さらに,昨年度と同様に,研究分担者とは綿密な連絡が取りあえるように,遠隔会議などを開催できるようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍による移動制限により,新規ボーリング試料を採取するための現地調査が一切できなかった。また,研究機関の停止によって実験補助者の雇用ができず,次年度に繰越金が発生した。この分については,本年度に実施する機械ボーリングや放射性炭素年代測定費用,旅費,実験補助者の雇用に充当する予定である。
|