研究課題/領域番号 |
19K01161
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中山 大地 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (90336511)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 旧版地図 / ジオコーディング / 近代東京 / 社会地図 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,申請者らが構築・公開している「近代東京ジオコーディングシステム」を空間的・時間的に拡充し,GISに慣れていないユーザーでも簡易的に使用できるようなシステムを構築し,近代期東京における複数時期の社会地図を作成することを目的とする.そのためには,(1)現在の「近代東京ジオコーディングシステム」を改良し,(2)多時期住所データの整備として,「東京市近傍郡部34町村(明治43年)」,「東京逓信局編纂 東京市十五區地圖(大正6ー13年)」,「大東京區分地圖(昭和15ー16年)」などを追加する.また,(3)システムの利用例として,明治・大正期の東京における社会地図の作成を行い, (4)成果の公表を行う. 現在のデータは明治40年の東京市15区の範囲となっている.これに明治44年(1911年)の東京市近傍郡部町村番地界入地図に収録されている近傍郡部34町村を加え,現在の東京23区に近い範囲に対応する.さらに東京逓信局が編纂した大正年間の東京市15区地図,昭和10年代を対象とした大東京區分地圖をデジタル化し,システムに追加する.これにより対象から昭和初期の住所表記に対応できるようになる. 昨年度に引き続き.追加するデータとして東京市近傍郡部34町村(明治43年)のデータ化に加え,マッチングアルゴリズの改良,WEBサーバーベースのサービス公開からコンテナベースのサービス公開への移植作業を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東京市近傍郡部34町村(全20枚)のうち7枚については幾何補正が終了している.現在作業を行っている地図については,作業が終了している区部よりも郊外に位置しているために幾何補正のためのGCPとなるポイントが取得しにくく,補正の精度が悪くなっている.これを解決するために古い空中写真(1960年代)なども併用して作業を行っているが,太平洋戦争終戦を挟んで土地の区画が大きく異なっている地域があり非常に時間がかかる作業となっている.このような場所では道路によるGCPの取得が期待できないため,河川(暗渠となっている部分も含める)や段丘崖などの地形的な情報も利用しながら手作業で行う必要がある.また,データソースとなる地図はきちんと投影されたものではないために場所によってひずみが異なり,線形変換では幾何補正ができないためにラバーシート変換で幾何補正を行っている.ラバーシート変換には地図1枚当たり500から1000点ほどのGCPを取得しているため.当初は幾何補正にそれほど時間がかからないと想定していたが,実際に作業をすると状況が大きく異なっていることがわかり,進捗状況が遅れていることの原因となっている.
|
今後の研究の推進方策 |
まずは必要な地図の幾何補正を完了し,デジタイズを行ってデータ作成を完了させることを第一の目的とする.その上で明治期東京の地価地図などの社会地図を作成し,成果を公表する. システムの公開については現状のWEBサーバーベースの公開からコンテナベースの公開に移植を行っている.WEBサーバーベースの公開は誰でもどこからでもアクセスできるという利点があるが,サーバーの保守管理にコストがかかってしまう.特にセキュリティー対策にはかなりのコストがかかるため,永続的な公開を行うには問題が生じる可能性がある.このため,コンテナベースの公開を考えている.コンテナとはローカルなPCやサーバー上で動く仮想マシンの一種で,動作が非常に軽いのが特徴である.コンテナの実装には既存のWEBサーバーベースの実装がほぼそのまま使え,さらにローカルマシン上で動作するためにインターネットを介したセキュリティの問題も軽減できる.システムのアップデートもコンテナサービスのハブに新しいコンテナを登録するだけで可能であり,永続的なサービスのハードルは下がる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で支出予定が変更になり,次年度使用額が生じた.
|