研究課題
本研究課題の目的は,時代や観測記録によって生じる気温データの不均質性を,日平均値レベルで,日々の天気や地理的条件を考慮して均質化するための手法を新たに確立することである。1日に数回のみの気温データから求めた日平均気温と24時間毎時観測値から求めた日平均気温との間に差が生じる要因として,日々の天気や観測地点の隔海度・標高によって,気温の日変化パターンが異なる事が挙げられる。昨年度の実施内容に引き続き,本年度は,以下3点の項目を重点的に検討した。・函館市内の現地気象観測を継続し,測器のメンテナンスとデータ回収を実施した。これまでに蓄積しているデータを含めて,データ整理を実施し,解析を進めている。・東京管区気象台は,1875年の開設以降,数回にわたり地点を移動している。直近では,2014年12月に大手町(気象庁露場)から北の丸公園内の露場に移転しているが,移転に伴う気温日変化の差異について検討した。その結果,特に晴天日の日最低気温の低下傾向が顕著に認められた。これは,移転に伴う周辺環境の変化(都市気候)が大きく影響しているためと考えられる。・灯台気象観測記録と気象庁の気温データの均質性について,すでに検討済みである東京,下関に加えて,長崎(伊王島),函館灯台について近隣のJMA官署データ(1901-1930年)との比較を行った。2地点について,季節変化はJMA官署データと類似しているが,内陸にあるJMA官署データのほうが,夏季は高温,冬季は低温傾向にあることが分かった。これは,先に検討した東京・下関も同様であり,灯台の気温データは,より海洋の影響を受けていることが推測できる。
2: おおむね順調に進展している
コロナウイルス感染症拡大のため,予定していた国内調査を中止したり,申請時に発表を予定していた国際学会に現地参加することができず,国内外への出張が実施できなかったため,新規の現地調査や学会での研究報告ができなかった。そのため,昨年度より継続して行っているデータ分析とすでに継続中の現地調査を中心に研究を実施した。データ分析は順調に進んでおり,国際学会については現地参加はできなかったが,オンライン開催された国内外の関連学会にて,解析結果を報告し,議論を行うことができた。
・多くの気象官署では,観測点の移動とともに,1日の観測回数も変動している。そこで,今後は観測回数の変動と日平均気温や日最高・最低気温との関係について検討する方策である。・函館市内の現地気象観測にて取得したデータをもとに,観測地点の環境(沿岸・内陸)や天気(晴・雨・曇)による気温の日変化について,統計分析を利用していくつかの系統に分け,それぞれの補正方法や補正式の算出を目指す。完了後に,その補正手法を灯台気象観測データなどに応用する。
コロナウイルス感染症拡大にともない,国内調査や国際学会での報告を目的とした国内・海外出張をとりやめたため。申請時に予定していた国内調査および国際会議のための国内・海外出張旅費として使用する予定であるが,2022年度も旅費支出が難しい場合には,研究関連資料(古文書)のデジタル化および成果発表論文の英文校閲の費用にあてる予定である.
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Climate of the Past
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10.5194/cp-18-327-2022
Climatic Change
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成蹊学園サステナビリティ教育研究センターリレーコラム
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地図情報
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