本研究課題の目的は,時代や観測記録によって生じる気温データの不均質性を,日平均値レベルで,日々の天気や地理的条件を考慮して均質化するための手法を新たに確立することである。1日に数回のみの気温データから求めた日平均気温と24時間毎時観測値から求めた日平均気温との間に差が生じる要因として,日々の天気や観測地点の隔海度・標高によって,気温の日変化パターンが異なる事が挙げられる。 最終年度においては,以下2点の項目を重点的に検討した。 1.函館市内の現地気象観測を継続し,測器のメンテナンスとデータ回収を実施した。これまでに蓄積しているデータを利用して,観測地点の周辺環境や天気などの様々な条件下において,気温の日変化にどのような差異があるか,さらにそれらのパターン化を行う統計解析を行った。 2.成蹊学園において1926年から継続して観測されている気象データと気象庁東京のデータを比較し,気温の日変化の比較,長期気候変動の分析,データの均質性の検討などを実施した。 研究期間全体を通して,実際に様々な観測環境条件下で気象観測を継続実施し,得られた気象データを利用して日平均気温や日最高・最低気温の変化パターンの特徴を明らかにし,統計的な類型化を実施した.その結果,全ての気温データに適用することは難しいが,ある条件下(標高差や隔海度が一定以下)の観測値については,地点移動に伴う不連続な気温データを補正することが可能であることが分かった。 コロナウイルス感染症拡大のため,予定していた国内調査を中止したり,申請時に発表を予定していた国際学会に現地参加することができなかった。しかし,オンライン開催された国内外の関連学会にて,解析結果を報告し,議論を行うことができた。
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