研究課題/領域番号 |
19K01163
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
平野 淳平 帝京大学, 文学部, 准教授 (80567503)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 歴史時代 / 気候復元 / 台風 / 日記天候記録 |
研究実績の概要 |
19世紀に長崎・出島で非公式に観測されていた気圧観測データから九州地方に襲来した台風を抽出することを目的とした解析を行った。まず,現在(1961-2020年)の長崎地方気象台における5-10月の気圧値観測値を使用して,19世紀と同様の1日3回(6:00,12:00,21:00)の気圧観測値から気圧が1000hPa以下に低下した事例を抽出した。抽出された各気圧低下事例について地上天気図をもとに気圧低下の原因となった擾乱を特定した。その結果,5-7月については気圧低下事例の多くが,前線や温帯低気圧の活動に伴う事例であり,台風に伴う気圧低下事例との区別は困難であることが分かった。一方,8-10月については,気圧低下事例の大半は,九州地方への台風接近・上陸に伴う事例であることが分かった。この結果は19世紀について,解析対象期間を8-10月に限定すれば,気圧低下事例をもとに台風が九州地方に接近・上陸した事例を抽出できることを示している。19世紀に長崎・出島でシーボルトによる気圧観測が行われていた1828年について気圧が1000hPa以下に低下した事例を抽出し,オランダ商館長日記の天候記録や九州各地の日記天候記録との照合を行った。その結果,1828年は8月12日と9月17日に気圧低下事例が認められた。このうち,9月17日の事例は,高潮と強風により北部九州で甚大な被害が発生した「シーボルト台風」によるものであり,8月12日の事例も日記天候記録やオランダ商館長日記の風に関する記述から台風襲来によるものであると推定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長崎の気圧観測データと九州地方の日記天候記録による歴史時代の台風事例抽出が進展しているため
|
今後の研究の推進方策 |
長崎・出島の気象観測記録をもとに19世紀の気圧低下事例抽出を行い,日記天候記録と照合することで九州地方への台風襲来頻度の復元を行う。また,東京で19世紀に観測されていた「霊験候簿」の気圧データについても同様の解析を行い,関東地方と九州地方の台風襲来数の比較を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,出席を予定していた国際学会などが全てオンライン開催となり,旅費を支出する必要が生じなかったので,差額が生じた。
|