本研究は、沈み込み型プレート境界に位置する日本列島太平洋側、とりわけ琉球海溝沿岸において、定常的地殻変動と地震性地殻変動との相互関係の具体を解明することによって、完新世海成段丘の形成メカニズムをより精密に解読することを目的としている。これにより、地震や津波の長期発生予測が可能となり、地域の防災・減災に寄与することができれば社会的意義も大きい。琉球海溝に面する南西諸島には、マイクロアトール(微環礁)とよばれる、その頂面の高さがほぼ平均低潮位に規定されるサンゴ群体が生息している。その形状、分布高度および形成年代などを利用して、検潮計では捉えられない過去数100年間以上の古水深の長期変動、すなわち陸地の定常的な隆起・沈降様式を推定し、それがこれまで主に地震性隆起によって説明されてきた完新世海成段丘の形成メカニズムにどのように寄与しているのかを具体的に明らかにする。2021年度は6月24日から6月27日に、南西諸島奄美大島の南東沖に位置する喜界島北部嘉鈍海岸において、内湾に成長している直径約3m程度の現生マイクロアトールを、その中央付近から外側に向けて幅10cm、深さ20cm程度の板状の試料を、油圧チェーンソーを用いて連続的に採取した。採取した試料は、CTスキャンなどを利用して堆積構造を可視化し、年輪をカウントするなどの方法により、成長方向や時期・期間などについて分析した。covid-19の第5波と重なったため、2022年度に研究期間を延長申請し、2022年7月14日から7月17日まで喜界島ハワイ海岸にてマイクロアトールの切削採取を行い、幅10cm、深さ20cm程度の板状の試料を長さ1.5m程度取ることができた。現在はこれらの試料の年輪解析と年代測定を行っており、2023年度には学会で成果を発表する予定である、
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