研究課題/領域番号 |
19K01170
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
川田 力 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (30263643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オーストリア / 都市 / マネジメント / 地理学 / 持続可能 |
研究実績の概要 |
EUによる経済統合・政治統合が進むヨーロッパにおいては国家の領域内外における地域再編・地域統合が推進されることにより、国際的な都市間競争が激化している。しかしながら、オーストリアにおいては、2000年代以降、国内最大都市のウィーンが都市機能の順調な成長をみせる一方で、中小都市においても都市機能の維持や成長が確認されている。 このことを踏まえ、本研究は、各都市のおかれた社会経済的状況に差異があり、都市間競争への対応と都市の持続可能性への対応という2つの政策課題の調整が必要となっているオーストリアにおいて、各都市の都市マネジメント戦略を分析することで、都市の持続可能性に関わる地域的要因を解明することを目的としている。その際、都市マネジメントに関わる各ステークホルダーの関係性と、各ステークホルダーにおける地理的差異や空間構造に対する認識が都市マネジメントの多様性に影響を及ぼしていると考えられることにとくに着目する。 本年度は、上記の目的を達成するため、オーストリアを訪問し、現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により現地調査の実施を断念し、昨年度入手した資料の分析と文献研究によりオーストリアにおける都市マネジメントの背景となるオーストリア空間開発構想の近年の動向について考察した。 その結果、オーストリアでは、社会的課題、環境的課題、経済的課題への対応を見通した空間計画が構想されるなかで、競争力強化の側面が後退し、環境的側面のみならず、社会・経済の持続可能性の向上の重視が進んでいること、これは2000年代冒頭に見られた格差是正から地域競争力強化への転換とは異なる方向性であること、オーストリア空間開発構想がEUの地域政策における優先投資分野の見直しに敏感に反応していることが判明し、学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、オーストリアを訪問し、事例調査都市の決定、現地調査プログラムの確定を行うとともに、事例調査都市において詳細な現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オーストリアでの現地調査を断念した。このため、研究の目的の達成のための今年度の研究計画は遅れていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の計画で研究を進める。(1)事例調査都市の決定:事例調査候補都市を巡回し、行政資料の入手および現地観察を行うとともに調査協力が十分に得られるかどうかを確認し事例調査都市を絞り込む。(2)現地調査プログラムの確定:事例調査候補都市について収集した情報を詳細に吟味し、現地調査実施に最も有効なプログラムを確定する。(3)現地調査の実施:現地調査プログラムにもとづき、事例調査都市における社会経済的状況、都市計画、国際的な都市間の競争・持続的な発展への対応、地方行政組織の構造と保有権限、都市の政治的状況、コミュニティー組織・住民活動パフォーマンスの状況などについての詳細な現地調査を実施する。(4)調査結果の分析と補足調査の実施:以上の結果をとりまとめ、必要な情報に地図化処理を加え、都市マネジメントが都市の持続可能性に関わる地域的要因と、他地域への波及効果について分析する。その際、必要に応じて事例調査都市において補足調査を実施する。 新型コロナウイルス感染症の拡大により、オーストリアでの現地調査の実施が困難となる可能性がある。引き続き、オンラインや電子メールでの情報収集に努め、現地調査が可能となった時点で迅速・効率的に実施できる体制を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。(1) 新型コロナウイルス感染症の拡大により、オーストリアでの現地調査を断念したこと。(2) オーストリアの都市特性に関する統計データへの定期アクセス権の購入を予定していたが、現地調査を断念したことにより事例調査都市が未決定となっており、購入データを精査するために購入を延期したこと。 次年度の研究経費の主な使用計画は以下のとおりである。(1)オーストリアでの現地調査を実施する。(2)オーストリアの都市マネジメント関係図書を購入する。(3)オーストリアの都市特性に関する統計データを精査し、定期アクセス権を購入する。
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