研究課題/領域番号 |
19K01171
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今里 悟之 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (90324730)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | キリシタン集落 / 宗教分布 / 民俗宗教 |
研究実績の概要 |
本年度においても,昨年度に引き続き,コロナウイルスの全国的な感染蔓延のために,現地調査を止むを得ず見送った。このため,一昨年度までの現地調査によって蓄積した資料の整理と再検討に加えて,地理学以外の宗教学や民俗学などの隣接分野の多数の文献も含めた形で,新たな視野の獲得に努めた。 第一の研究では,長崎県平戸島の2つの中心地を対象として,その多くがキリシタンの末裔であるカトリック戸が,近現代を通じて在来宗教戸と具体的にどのように空間的に混住してきたのかについて,現地で収集した聞き取り資料などに基づいて明らかにした。特に平戸市街周辺の事例においては,旧来の武家の転出状況を考慮しながら両者の混住に至った過程を可能な限り追跡し,全国的に見て特異な空間構造を持つ平戸城下町の変遷史の解明にも一定の寄与を成し得た。 第二の研究では,長崎県平戸島の複数の旧キリシタン集落と在来宗教集落を事例として,日本の民俗宗教においてなぜ複数の宗教が併存し得てきたのかという,日本宗教の本質理解に関わる問題について,主に住民の空間的な世界観,および宗教の供給者と需要者という観点から明らかにした。いずれも島内の住民である個人の宗教者や信仰者に対する聞き取りに加えて,各集落の祭祀の状況を比較する形で,①島全体,②集落,③世帯・個人という3つの空間スケールから検討した。この成果は,日本の宗教学や民俗学などにおける長年の研究蓄積を踏まえながら,英語圏の日本宗教の研究にも視野を広げた結果,英文の学術雑誌に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初からの全国的なコロナ禍の継続により,現地調査が困難となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの全国的な感染状況の推移を慎重に見極めながら,可能な範囲で現地調査を実施し,他方で引き続き,既収集資料や文献のみで可能な研究をさらに進めて行く予定である。次年度は研究の最終年度に当たるため,書籍としての集成を目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ満額を使用し,全体から見れば,ごく僅かの金額が繰り越されるにとどまったため,特段の問題はない。残額分は,次年度の物品費に含めて使用する予定である。
|