研究期間の最終年度となる令和3年度は、研究開始当初には想定できなかったコロナ禍における状況の変化を踏まえて、不動産情報誌や各社のホームページを通じてフレキシブルスペース(以下、拠点)の立地展開について、施設内容や規模を考慮してより詳細に分析した。まず、拠点数が増加する中では交通結節点に立地する傾向がより強まりつつ、隣接駅に立地が拡大している。また、駅から徒歩圏に集中しており、競合サプライヤーの拠点が同じビルに入居している事例も把握できた。施設内容に着目すると、2020年以前は主として都心で開設され、タッチダウンや一時的に利用するスペース、利用者の協働促進を目的とした施設形態で開設されたが、2020年以降に開設された拠点は郊外地域のブース型が多い。新型コロナウイルスの感染対策とともにビデオツールの利用によるネット会議時の音対策が強く意識されており、個人ワークが前提の施設形態が増加している。一方で、オープン型の拠点も引き続き展開しており、コロナ禍のもとでのサテライト利用とポストコロナを考慮したコワーキング利用の目的による棲み分け、言い換えればユーザーの棲み分けの進行がみられた。 2021年時点での施設規模を推計したが、対象としたサプライヤー合計で500拠点、席数は1万2500席程度であり、1拠点につき平均25席程度の規模であった。郊外での拠点数は増加しているもののオフィスワーカーとなりうる就業者数に対して提供される席数は多くはなく、郊外就労の場としての役割は限定的である。郊外に新規に拠点を置く場合は、郊外の駅周辺では拠点を開設できるビルや施設が限られている。加えて、郊外拠点では感染対策も考慮してコンシェルジュを配置せず、コストダウンが図られた無人遠隔管理の拠点も増加している。 この成果の一部を学会で発表した。
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