2023年度は、富山県若者調査(以下、富山調査とする)との比較を通して学校から仕事へのトランジションの地域差を把握するため、山口県の若者アンケート調査を行った。山口県在住の18~39歳男女(学生を除く)を対象とし、有効回答数は424であった。調査、分析の結果、以下の点が明らかになった。 山口県が初職所在地の者340名の山口事業所に配属になった経緯をみると、多くが山口県で働くことを前提に就職しており、これは富山調査と同様の傾向であった。しかしながら、「会社の都合」が15.9%と富山の11.1%と比べると相対的に高い。 山口県出身者332名のうち、初職時に県外で働くことを検討しなかった者は62.7%(208名)で6割を超えるが、富山調査の70.0%(317名)よりも低かった。検討しなかった理由は「実家から通いたかった」と「山口県を離れるのが嫌だった」が多く、全体の75%を占める。これらが多いことは富山調査と同様だが、構成比は富山(83.5%)よりも低い。 初職の企業を見つけた方法は「学校の紹介」が35.6%と多く、富山調査と同様の傾向であった。特に最終学歴が高校の者においてその傾向が強く、山口県においても依然としてトランジションに制度的リンケージが及ぼす影響が強いことが示された。また、進路指導の様子についてテキストマイニングを行ったところ、技術面よりも成績が重視されることが示された。これは、富山調査、山口県企業調査と同様の傾向であり、産業教育がトランジションに及ぼす影響は限定的であると考えられる。 これまでの調査、分析結果を合わせて考えると、最終学歴が高校の者においては依然として制度的リンケージがトランジションに影響を与えているが、その強さには地域差があることが示された。そして、これが若者の地元定着に影響を与えていることが示唆される。
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