研究課題/領域番号 |
19K01175
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
美谷 薫 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (50782968)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行政区域 / 行政区域再編 / 行政資源配分 / ローカル・ガバナンス / 水道事業 / 広域化 / 圏域 / 人口減少時代 |
研究実績の概要 |
本年度はまず,これまでに引き続き,隣接分野も含めた行政区域再編に係る文献・資料収集等を進めた。この結果をもとに,地理学における行政区域研究のこれまでの経過と今後の課題について整理し,地方自治総合研究所の「地域の法と政治研究会」において報告した。報告では,地理学における伝統的な地域概念との関連を示しつつ,今後の地理学における「行政区域研究」の視点として,行政区域の再編と行政資源の配分,行政区域の階層性と「地域システム論」的理解など,7つの論点を示した。同研究会では,この報告内容について行政学・行政法学等の隣接分野の研究者との意見交換を行った。 また,当初計画と順序が逆になる形であるが,現時点での行政地域システムの再編の先進事例に係る調査の一部を実施した。ここでは,事務分野ごとの行政の広域化の事例として水道事業を取り上げ,都道府県が設定した水道事業広域化の議論の下敷きとなる「圏域」設定の特徴を整理した。この「圏域」には,従来の広域行政のまとまりが一定程度活用される一方で,水源や河川流域なども重視され,その設定には装置産業としての水道事業の特性が大きく影響していることを明らかにした。成果は「水道事業広域再編に係る都道府県の『圏域』設定の特性」として公表した。 このほか,上記の行政区域研究の課題整理の結果を受け,本研究の中心的な位置づけとなる,全国の市区町村に対する質問紙調査の実施に向けた準備作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の進捗状況を踏まえ,本年度は福岡県内における多様な属性の市町村の事例調査を実施し,それらを踏まえて全国的な質問調査を行うこととしていた。しかしながら,今年度においても,福岡県下を対象とした緊急事態措置の発出などにより,独自の調査を実施することが困難になり,文献や資料の収集とそれらの分析が中心となった。このことに加えて,引き続き「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大への対応に係る本務校の臨時的業務に相当程度従事するとともに,教職課程の拡充に係る新規業務などが発生し,計画の進捗を確保することができなかった。このため,「遅れている」の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の進捗が大幅に遅れたことから,研究期間を1年間延長する申請を行ったところである。次年度については,「新型コロナウイルス感染症」の拡大が比較的落ち着いた状況が見込まれ,また本務校での担当業務の変更も予定されていることから,まずは昨年度予定していた福岡県内市町村や県組織の事例調査を実施する予定である。これらの成果を踏まえて,全国の市区町村及び都道府県向けの質問紙調査を実施し,その結果の整理を上半期中に終えられるように準備作業を進めている。今後の「新型コロナウイルス感染症」の拡大状況によっては,これらの調査計画を縮小し,対象地域を一部限定する形で調査を実施することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,「研究実績の概要」及び「現在までの進捗状況」に記載したように,当初計画で予定していた事例調査や質問紙調査を実施することが困難となったことなどにより,旅費や郵送関連経費の未使用が発生したことなどが挙げられる。次年度使用額分については,今年度実施できなかった質問紙調査のための経費や,事例調査のための旅費並びに資料収集を中心に充当する方針である。
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