2023年度研究では、介護分野における外国人材の受入れに地域的な差異が生じるなかで、受入れ促進に向けて地方自治体がどのような支援策をとっているのかを実態調査をもとに検討した。 制度的枠組みに依拠した外国人材の受入れは、介護サービス業の場合、2007年開始の経済連携協定に基づく外国人介護福祉士候補者受入れをはじめ、政府主導のもとで進められてきた。しかしながら、その受入れ地域が大都市圏に偏るなどの地域的差異がそこには認められる。例えば、出入国在留管理庁によると埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県の8都府県には、全国の特定技能介護分野の在留外国人数(2023年12月)の52.1%が在住する。このため、介護人材が不足しているにも関わらず外国人の受入れが少ない地域では、地方自治体による支援策が受入れ促進にとって重要な役割を担う。 地方自治体が実施する支援策をみると、介護事業者外国人留学生支援事業費補助金など、全県的に実施されている事業がある一方で、個々の地方自治体が主体となって実施している事業がある。福岡市は外国人介護人材マッチング事業、外国人介護人材等と地域の「草の根交流プログラム」等を実施し、介護分野への外国人材の参入および定着を促進している。また、北九州市は外国人介護職員オンライン学習講座等を実施し、介護サービス業の人材育成を支援している。こうした受入れ促進策が、地方の政令指定都市や中核市を中心に導入される傾向にある。 外国人材受入れの地域的不均衡は、新たな外国人技能実習制度においても注意を払うべき問題の1つである。2023年11月に法務大臣に提出された技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議での議論を踏まえた最終報告書によると、人手不足が深刻な地方や中小零細企業において人材確保が図られるように配慮することが留意事項として示されている。
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