研究課題/領域番号 |
19K01180
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大石 太郎 関西学院大学, 国際学部, 教授 (70433092)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アイデンティティ / ローカル化 / ハイブリッド化 / フランス系カナダ / アカディアン / ニューブランズウィック州 / ケベック州 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、さまざまな点で転換期を迎えているフランス系カナダにおけるアイデンティティのローカル化とハイブリッド化を現地調査にもとづいて明らかにすることを目的としている。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、2020年度に続いて2021年度も現地調査を実施することができなかった。そこで、文献や統計に加え、これまでに収集した資料の整理と分析に努めた。 本研究課題に関連する成果として、ケベック州モントリオールにおける英語話者の言語使用とアイデンティティを論じた報告を刊行した。フランス系カナダにとって英語および英語話者との関係はつねにつきまとう課題であり、フランス系カナダのアイデンティティを考えるうえで、ケベック州ではマイノリティとなる英語話者の状況を把握することには意義がある。また、モントリオールを含むカナダの三大都市圏における非公用語話者の居住分布を検討した報告を刊行した。非公用語話者とは、カナダの公用語である英語とフランス語以外の言語を母語とする人々を指し、その多くは最近の移民である。フランス系カナダにとってフランス語を話す移民の獲得や移民に対するフランス語教育は重要であり、アイデンティティのハイブリッド化と密接にかかわっている。これらに加えて、世界の地域問題を論じた一般書において、オンタリオ州のフランス語話者を中心にカナダの公用語マイノリティの現状を紹介した。 これらの成果をふまえて、今後も本研究課題を推進していくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに蓄積してきた資料にもとづいて若干の成果を公表できたものの、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、本研究課題を進めるにあたって不可欠となる現地調査を実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないなかで、当分の間は文献や統計、これまでに収集できた資料の整理と分析を進める。とくに、2021年国勢調査の結果が順次公表されつつあり、今年度後半には本研究課題と密接にかかわる言語関連のデータの公表が始まることが想定される。必要に応じて研究補助者を雇用し、データの整理と分析を効率的に進められるよう工夫したい。また、現地の新聞の電子版を購読して現地情報をフォローし、調査が可能になった際に円滑に進められるように準備を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は2020年度に引き続き新型コロナウイルスの感染拡大により現地調査が実施できず、旅費の支出がなかった。年度末に現地調査の機会が得られる可能性を考慮し、別の支出に充当することもしなかった。2022年度分として請求した助成金と合わせて、今後の現地調査の費用に充てるつもりであるが、引き続き現地調査を実施できない場合には、データの入力や整理、製図のための研究補助者の雇用などに使用する予定である。
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