研究課題/領域番号 |
19K01182
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
田中 耕市 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20372716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 防災 / 減災 / ソーシャル・キャピタル / GIS / 地理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が地域の防災・減災力に与える影響を明らかにするとともに、そのソーシャル・キャピタルを醸成する要因を地理学的視点から解明することを目的としている。最終的には、地域のソーシャル・キャピタルの醸成を介して、防災・減災力を向上させることへの貢献を目指す。本研究の主な対象地域には、近い将来に南海トラフ地震による津波が危険視されている四国地方沿岸部と、令和元年東日本台風による水害の被災地域を取り上げている。 令和2年度は、新型コロナ感染拡大に伴って、予定していた四国地方沿岸部における調査を進めることができなかったため、①令和元年東日本台風による水害の被災地域(主に茨城県および福島県)における調査と、②四国地方沿岸部における津波からの避難しやすさの定量的評価の更新および分析を進めた。 ①については、新型コロナ感染拡大防止に留意しながら水戸市内の水害被災地域の住民への聞取り調査や、防災活動への参与観察を実施した。加えて、アンケート調査結果や地理的条件の定量的分析から、自主防災組織よりもミクロな集落単位における住民の防災・減災意識の違いと、それに寄与する要因を明らかにした。②については、津波からの避難しやすさの定量的評価に用いる避難施設のキャパシティ等をはじめとする情報を更新して、さらなる分析を進めた。 今年度の研究成果の一部は学術雑誌に投稿しており、令和3年度に発表される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大によって、現地調査を予定通りに進めることができなかった。特に、四国地方沿岸部における調査については、長距離移動を伴うために実施することができなかった。一方で、そのような移動を必要としない茨城県内および隣接する福島県いわき市内の令和元年東日本台風による水害の被災地域において、新型コロナ感染拡大防止に留意しながら現地調査を進めた。当該地域における調査では、結果的に当初の予定を上回る成果が得られている。また、現地調査が制限されているなかで、地理空間情報を活用したGISによる分析を進めることに努めた。本年度の研究成果の一部は学術雑誌に投稿済みである。 本年度に実施できなかった予定を次年度にまわすとともに、次年度に予定していた分析の一部を可能な範囲で前倒しし、全体としての研究計画の進捗にできるだけ支障が生じないように務めた。しかし、本年度に実施できなかった調査に積み重ねられるべき分析・考察の遅れは否めないため、進捗状況は「(3)やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、前年度に予定されつつ実施できなかった、四国地方沿岸部の集落における現地調査を実施することを予定している。ただし、変異株も出現している新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当該地域への自由な移動やフェイス・トゥ・フェイスでの聞き取り調査が非常に進めにくい(対象地域に特に高齢者が多いこともあり)状況にある。 一方で、令和元年東日本台風による水害の被災地域における調査が当初予定よりも進んでいることと、研究目的を達成するためのタイムスケジュールを鑑みれば、主な対象地域をこちらに変更して、当初の研究計画内容を推進し続けることがより現実的と考えている。 そのため、令和3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に十分に留意しつつ、水害の被災地域におけるさらなる現地調査を継続して実施する。対象地域における地理的条件を考慮した、水害からの避難のしやすさについても定量的に測定し、解析する。それとともに、四国地方沿岸部における分析も、これまでの調査内容と収集した資料・データをもとに進める。両地域における分析・考察をもとに、当初の研究目的の達成に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、新型コロナ感染症拡大に伴って予定していた地域での現地調査を行うことができず、それに利用する予定であった旅費を使用しなかった。また、それに係る作業補助の人件費も使用しなかった。令和3年度は、対象地域における現地調査のための旅費、調査で得た資料やデータ解析の作業補助の人件費、英語論文投稿に係る校閲料等に使用する予定である。
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