本研究は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が地域の防災・減災力に与える影響を明らかにするとともに、そのソーシャル・キャピタルを醸成する要因を地理学的視点から解明することを目的としている。最終的には、地域のソーシャル・キャピタルの醸成を介して、防災・減災力を向上させることへの貢献を目指す。本研究の主な対象地域には、近い将来に南海トラフ地震による津波が危険視されている四国地方沿岸部と、令和元年東日本台風による水害の被災地域(主に茨城県)を取り上げていた。しかし、長期にわたって新型コロナ感染症問題による遠隔地における現地調査が困難であったため、研究代表者の勤務地から近い後者を主要な対象地域と位置づけ、さらに研究期間を令和4年度末まで延長して、令和3年までに予定通り進められていなかった調査・分析を行った。 令和4年度においては、主に令和元年東日本台風による水害の被災地域(主に茨城県)における現地調査、特に住民への対面による聞取り調査を進めた。同時並行して、防災意識の向上を目指す研修会を共同開催するなど、地域の防災活動への参与観察を進めた。また、茨城県住民を対象にアンケート調査を実施して、ソーシャル・キャピタルやそれが防災意識や備えに関わる影響について解析した。そして、本研究期間におけるこれまでの調査・分析の総括を行った。さらに、研究期間の成果の公表を進めて、複数の学会における発表を行って他の研究者からの有益な指摘や助言を得た。それらを踏まえた学術雑誌への論文原稿を作成して投稿した。
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