本年度は,最終年度に当たり,残された課題に対応するとともに,これまでの研究のとりまとめを行った。また,合わせて,後の研究につなげる準備を行った。具体的には,研究テーマに関する最新の知見を得るため,経済地理学会大会(2023年5月東京)に,日本地理学会秋季大会(9月大阪)などに参加した。特に,経済地理学会の産業集積に係るシンポジウムは参考になった。また,6月には大阪府高槻市の立命館大学を会場に開催された国際経済経営地理学に関する国際シンポジウムで,また7月には香川大学経済学部で開催された「香川県の人と経営に関するプロジェクト」研究会で発表した。 並行して,グローバルニッチ企業の動向について明らかにするため,国内外でフィールド調査を行った。具体的には,2023年9月にアメリカ中西部において,聞き取り調査と一次資料の収集を主とした現地調査を行った。また,2024年3月には,北陸地域,特に福井県に本拠をもつグローバルニッチ企業に対し聞き取り調査と文献調査を実施した。合わせて,この間の研究成果を発表すべく,論文を作成中である。 本研究期間の最大の成果は,2022年に国際的な学術出版社であるSpringer社より,英文の編著"Management geography: Asian perspectives focusing on Japan and surrounding regions"を発行できたことである。本書は,日本地理学会の英文叢書の1冊として,審査を経て出版されたものである。本書では,経営地理学という新たな分野の開拓について(第1章),また地方に本拠をおくグローバルニッチ企業の動態の特徴について論究した(第5章)。合わせて,全体を監修した。これまでに2箇所(the Asia-Japan Research Instituteと地理学評論)で書評が掲載され,肯定的な評価を得た。
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