研究課題/領域番号 |
19K01190
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
石井 久生 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70272127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 政治地理学 / バスク地方 / バスク・ディアスポラ / バスク・ナショナリズム |
研究実績の概要 |
本研究で,フィールドワークを主体とした実証的研究と,文献調査やデータ分析を主体とした理論的研究を同時並行的に推進することを計画している。実証的研究については,9月にバスク地方,10月にアメリカ合衆国ネヴァダ州エルコにおいてフィールドワークを実施してデータを収集した。バスク地方のバスク州においては,バスク州政府首相府のディアスポラ政策担当官Benan Oregui氏と面談し,ディアスポラのバスク政府代表部や民間機関に関する各種情報を入手した。さらに同じくバスク地方のナバラ州では,ナバラ州政府首相府海外政策担当官Inaki Martinez de Vergala Lusarretaから,南北アメリカのナバラ・センターに関する情報を収集した。 ディアスポラ調査はアメリカ合衆国のエルコにおいて実施した。グレートベースン大学(GBC)のGretchen Skivington教授の協力のもと,バスク移民の第一世代の高齢者らからのインタビュー調査を実施し,彼らのライフヒストリーに関する情報を入手した。また,バスク系移民第一世代のJosus Lopategui氏の協力のもと,1900~1920年代の土地登記簿や古地図のデータを収集した。 現地調査で得た貴重なデータをもとに,現在2編の論文を執筆中である。ひとつが「アメリカ合衆国エルコにおける初期バスク人コミュニティの形成過程とディアスポラ。ナショナリズム(仮題)」,もうひとつが「バスク・ガストロノミーにみるコスモポリタニズムとナショナリズム――バスク・ナショナリズムの新たなる形態(仮題)」である。両者とも今年度秋の投稿に向けてデータ整理と執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,初年度にバスク地方とバスク・ディアスポラの1地域(アメリカ合衆国ネヴァダ州エルコ)においてフィールドワークを実施してデータを取集する予定だった。この2地域については調査を実施できたので,研究計画通りに進んだといえる。 しかし,研究計画を先んじて,3月前半にアルゼンチンのブエノスアイレスでのフィールドワークの計画を進めて,各機関や個人とのアポイントメントも全て取り付け,航空券も入手して,翌週に出発となったころに,コロナウイルスの流行が世界的に深刻な状況となってしまい,出発5日前の段階で断念した。研究計画を先に進める計画だったので,今年度中の計画は順調に進んでいるといってもおかしくはないのであるが,バスク州やナバラ州での調査の感触では,南北アメリカ大陸でもっとも多くのバスク人が集住するブエノスアイレスは,人口規模もさることながら多数の多様な同胞組織があるために,予備調査と本調査の2度の調査の実施が必要であると考えていたところ,出ばなをくじかれてしまった感が強い。今後残りの期間で十分な情報収集が可能か不安な点が残るため,研究計画全体を見渡して「少々遅れている」と判断している。 さらにコロナウイルスの南北アメリカ大陸での大流行も懸念材料である。調査計画を立てたディアスポラはいずれも南北アメリカ大陸にある。研究計画が今後順調に進むのか大変不安である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画が海外フィールドワークを大前提としているところ,昨今のコロナウイルスの流行が今後の研究計画にどのように影響するか見通せないのが,今後の研究の進め方を見通すうえで大きな懸念材料である。 各地の機関や個人とは,インターネットを通じてある程度の情報交換ができるので,そのような方法で情報を蓄積するという手段はある。しかし,今年度のエルコでの調査の例でも明らかなように,現地の地方裁判所や公文書館に足を運ばなければ入手不可能な情報があるのは明らかであるし,人づてに紹介されたインフォーマントから貴重な情報を得ることもできるのも事実である。こうしたことを念頭に置きつつ,現地調査が困難な状況下で,いかに有用な情報を入手するか,先方の機関や人々とも相談しながら,慎重かつスピーディーに調査計画を進める所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,3月に計画したアルゼンチンのブエノスアイレスでのフィールドワークがコロナウイルス流行により中止となり,そこで使用する計画だった旅費(航空運賃,宿泊費など),現地での書籍購入費や資料複写費がすべてキャンセルになったためである。 次年度はコロナウイルスの状況が好転し次第すぐにフィールドワークを実施するとともに,フィールドワークを補えるような文献資料や電子資料を可能な限り入手し,予算を計画的に消費する予定である。
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