研究課題/領域番号 |
19K01190
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
石井 久生 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70272127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バスク地方 / バスク・ナショナリズム / バスク・ディアスポラ / 政治地理学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,ヨーロッパのバスク地方と南北アメリカ両大陸のバスク・ディアスポラを研究対象地域とし,移民の故地と移住先において展開されるバスク・ナショナリズムの共通項と,各地域における地理的差異に着目し,1980年代に故地バスク地方で進行した民族的ナショナリズムから静かなナショナリズムへのシフトの過程を明らかにすると同時に,移民終息を経験した新大陸移住先のディアスポラ各地において彼らのナショナリズムが故地の変化と対応してどのように変化したかを明らかにし,故地とディアスポラのナショナリズムの対応関係に考察を巡らすことを目的としている。 研究計画3年目となる2021年度は, 昨年度に引き続くCOVID-19の世界的な流行により,本研究課題を進めるうえで基軸となる海外現地調査が困難で,バスク・ディアスポラの研究対象地として候補に挙げていたブエノスアイレスやハバナでの調査が実施できなかった。そのため計画していたバスク・ディアスポラのナショナリズム研究が遅れている。 しかし,これまでに蓄積したデータやインターネットなどを介して収集した情報をもとに,2本の論説を発表した。ひとつは,スペイン・バスク地方のビスカヤ県ドゥランゴにおいて1960年代以降毎年開催されているブックフェアを研究対象とした論文で,昨年度に公表した日本語論文をベースに,現地におけるナショナリズムの新しい方向性を大幅に加筆し,スペイン語で執筆した。もうひとつは,アメリカ合衆国におけるヒスパニックのアイデンティティ継承に関する論文である。バスク人もスペイン語話者が多いため広義のヒスパニックに含まれるが,彼らの強い結束が世代を経ても継承される実態を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題遅延の最大かつ唯一の原因は, 2020年2月頃から現在まで続く世界的なCOVID-19の流行による海外渡航の制限により本研究課題必須の海外現地調査全く実施できないことにある。2021年度は,ヨーロッパのバスク地方(同年度8月頃),ハバナ市(キューバ)およびメキシコ市(同年度2月頃)にディアスポラ・ナショナリズムの実態を現地調査により明らかにする計画であったが,まったく実現できなかった。さらに前年度に計画していたブエノスアイレス(アルゼンチン),モンテビデオ(ウルグアイ)の現地調査も実施できなかったため,研究計画は完全に後れを取っている。必要な情報は極力インターネットなどを介して収集したが,現地調査により得られる情報に比較すれば質量とも大きく劣り,研究計画の遅れを補完するには及んでいたい。 他方,文献調査によるナショナリズムの理論的研究は,研究費の大部分を文献購入に充てたことにより,着々と進行している。ただし,現地でしか入手できない文献も多数あるため,海外調査を実施できる日々がなるべく早く戻ってくることを切に願っている。
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今後の研究の推進方策 |
海外現地調査が2年間まったく実施できていなかったことにより研究計画が大幅に遅れたため,研究期間を1年間延長した。延長による最終年度となる今年度は,海外現地調査が再開できる機運がみられるところから,現時点では,バスク地方(8月頃),キューバのハバナ市(9月頃),メキシコの首都メキシコ市(10月頃),アルゼンチンのブエノスアイレス(2月頃),ウルグアイのモンテビデオ(2月頃)で最終的な現地調査を実施し,これまでの遅れを取り戻すとともに,研究を総括する計画である。 ただし,先行きがまだ不透明であることから,研究調査対象の代替候補地も考えている。。一つは,日本国内の西日本に集まるバスク人のコミュニティである。彼らは数こそ少ないながらもイエズス会の宣教師として来日し,故地バスクとの連帯を保ちつつ日本国内で布教活動にいそしんでいる。もう一つは近隣の海外であるフィリピンのバスク人コミュニティである。こちらも規模こそ少ないがスペイン領だった時代からの伝統で彼らのディアスポラが根付いている。このように可能な限りの可能性を見出して,研究計画の遂行に向けて努力していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的流行の影響で海外現地調査が最近2年間まったくできず,研究計画の遅れと予算残額が生じたため,研究機関を1年間延長した。今年度は,海外現地調査が再開できる機運がみられるところから,現時点では,バスク地方(8月頃),キューバのハバナ市(9月頃),メキシコの首都メキシコ市(10月頃),アルゼンチンのブエノスアイレス(2月頃),ウルグアイのモンテビデオ(2月頃)で最終的な現地調査を実施し,バスク・ディアスポラにおけるナショナリズムの研究を実施する計画である。これにより,これまでの現地調査の遅れを取り戻し,バスク・ナショナリズム研究を総括する計画である。
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