スペイン・バスク地方におけるナショナリズム運動は、分離独立を目指す過激な運動から日常的行為としての静かな運動へのシフトが進行している。それは州政府など公的部門によるバスク語正常化運動に限らず、祝祭や集団的記憶の顕彰など、多様な形態をとりながらも住民の日常的な行為に収束した静かなナショナリズム運動として観察される。南北アメリカ大陸のディアスポラでも、1980年代以降、同胞の結束強化を目的とした運動へのナショナリズム・シフトが進行中である。その背後には、バスク州政府外務局を通した資金や情報の流動があり、大陸間で維持されるモビリティのポストモダンな形態が両者のナショナリズム・シフトを推進している。
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