研究課題/領域番号 |
19K01191
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山本 健兒 帝京大学, 経済学部, 教授 (50136355)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済地理学 / 場所 / 住民運動 / 地域整備 / 土地利用 / エコロジー / 環境保全 / フォラールベルク |
研究実績の概要 |
2021年度もCOVID-19感染蔓延状況の故に調査のための渡航が不可能だった。そこで、代替手段としてインターネットでの情報収集に努めた。その結果、論文「オーストリア・フォラールベルク州の活力ある中小企業」を公表できた。ここで取り上げた中小企業5社はいずれも近年良好な業績をあげているが、その生産物市場は当初州内と、隣接するドイツおよびスイスのボーデン湖沿岸という地方市場に限定されていた。しかし5社ともに、生産物の高い質の故に公的機関等による授賞や業界誌による高評価記事なども影響して、欧州ないしグローバルスケールにまでその市場の地理的範囲を次第に拡大した。また、食品企業や木工家具製造職人企業はエコロジーを重視する経営理念とその実践により、その意識を持つ消費者が多いドイツ語圏で市場を拡大できていることが明らかとなった。 フォラールベルクのスタートアップ政策は2018年から同州の経済会議所が推進しており、住民の間に起業の機運が高まっていることも確認した。ただし、人口や既存企業数に対するスタートアップ数の比率という点で、同州はオーストリアの中でむしろ低位にある。しかし、1990年代以降の長期でみれば新規創業企業の中からグローバルないし欧州スケールで活躍する「隠れたチャンピオン企業」あるいはこれに近い地位にまで成長できた企業が少なくないことも事実である。 成長する企業と、住環境保全及びエコロジーを重視する住民との間で、緑地として永久保全すべきと定められている土地の用途指定変更をめぐって軋轢がおき、住民運動の結果として用途指定変更なしとなった事例は、2020年度に発見したルーデッシュ村だけでなく、ほかにもあることが判明した。2021年度にはそうした住民運動やこれを理解するための背景となるラウムオルドヌング(地域整備)の制度に関する資料をインターネットの駆使により収集する活動を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の進捗が遅れている最大の理由は、COVID-19感染状況の故に現地調査が不可能だったことにある。しかし、2019年度に行なった調査結果を論文として公表することができたし、インターネットでの情報収集を精力的に行なったので、新しい情報を得ることができている。それゆえ、研究遂行が不可能になるほどの遅れではない。2022年度は教育の義務がなくなり研究に専念できる状況にあるので、研究進捗の遅れをかなりの程度挽回できると期待している。ただし、現地調査が可能になるか否かということにも研究進捗度は左右される。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の日本及びオーストリア・フォラールベルク州での感染状況を勘案しながら、渡航して現地での調査が可能になれば、1カ月程度の現地調査を2022年度内に2回行ないたい。それとは別に、2020~2021年度にインターネットで収集したフォラールベルクでの土地利用に関する法的枠組みと、ルーデッシュ村及びヴァイラー村での土地利用を巡る住民運動の経緯についての各種の文字情報を読解するとともに、さらなる記録資料のインターネットを用いての収集に努める。それらを踏まえて、年度内にフォラールベルク州の2つの村(ゲマインデ)で発生した、住環境保全とエコロジーを重視する住民運動について、その推移と帰結に関する論文を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染状況の故にオーストリア、フォラールベルク州での調査が実行できなかった。そのために2021年度の使用額が参考書籍1冊の購入代金に留まり、旅費への支出ができなかった。これが次年度使用額発生の理由である。 2022年度には1か月程度の現地調査を2回行ないたいと考えている。他方で、研究課題の遂行のために、地域整備に関するオーストリアやこの国の1州であるフォラールベルクの特異性の有無を調べる必要があると考えている。そのために、入手できる書籍その他の資料の有無を点検し、必要な書籍その他の資料の購入を考えている。ただし、その金額は合計10万円に満たないと予測する。
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