今年度は本研究計画の最終年度にあたることから、当初の研究計画書に従い、不審者情報やひったくり等の街頭犯罪を予防する観点から、ルーティン・アクティビティ理論や防犯環境設計の考え方を援用し、犯罪発生場所とその周辺の時間帯別滞留人口及び街並みの景観特性との関連性について、地理的ビッグデータを用いた分析に取り組んだ。具体的には、時間帯別滞留人口に関して、昨年度に続いて、より高頻度・高精度な時間・位置情報を有した滞留人口データを取得し、そのデータ内容を精査した上で、これまでの単純な時間別人口だけでなく、移動目的や移動形態、同じ時間・場所を共有する滞留人口を求めた。こうした詳細な滞留人口分布は、ルーティング・アクティビティ理論において指摘される自然監視(人の目による犯罪抑制)を定量的に把握するための新しいデータとなり得ると考えている。なお、このような時間帯別滞留人口と街頭犯罪発生との関連性に関する統計分析を継続して行うと同時に、コロナ禍による都市部の滞留人口減少と街頭犯罪の変化についても検討し、一連の研究成果を研究論文として近日中にまとめる予定である。また、続いて、街並みの物理的な景観特性の把握に関しては、昨年度、上からの目線となる高解像度の空中写真画像を入手した。今年度は、継続して画像分類の自動化技術を援用して建物や道路上の地物(車両、街路樹)を判読するための方法論を検討した。現段階で十分な成果を得られていないが、継続して研究を進めていく。最終的に、これまでの分析で得られたデータや知見を総括し、地理的ビッグデータを援用した街頭犯罪発生地点周辺の環境評価手法の確立に結び付けていく。
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