研究課題/領域番号 |
19K01196
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
轟 博志 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (80435172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歴史地理学 / 水経 / 山水考 / 朝鮮王朝時代 / 地理認識 |
研究実績の概要 |
この新たな研究は1年目にあたるので、基礎的なデータ整理を主に行った。 水経についての史料を韓国で収集し、それをもとに漢江を事例として水経表を試作した。試作した水経表は、日本では日本地理学会(新潟)で、韓国では文化歴史地理学会(ソウル)で、それぞれ発表を行った。新しい試みであったので、かなりの批判を頂いたが、建設的な意見も多く、今後の改良点や、さらに研究すべき点がはっきりしてきた。 特に過去の歴史地理を現代の学者がなぞってよいのかという批判は、この研究の根本にかかわるものであったが、この点は研究申請時にも明示した通り、かなり挑戦的な部分である。つまり、近世において未完で終わった地理的研究に対して、現代の地理学者が「当時の地理学者の立場になりきったと仮定して」その業績の完成を試みるというものだ。 かかる批判に対しては、この研究方法が、当時の地理学者の国土認識を検証することと、欠落した地理的知の完成を図ることにあることを、引き続き学会等を通じて説明してゆきたい。 さらに、2020年2月には洛東江下流域を事例として、水経表の経由地名と現地名との比定や景観観察方法の検討のため、予察出張を行った。その結果、伽耶津などかなりの地名が失われ、また変更されていることが判明した。これに関しては、補完のために自己資金で購入した「韓国地名総覧」と丹念に照合することにより、地名の不明率をかなり押し下げることができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表を日韓で行ったこと、史料収集が進捗したことから、そのように判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は水経表の完成、現地調査、地名比定、国際学会での発表などを行い、最終年度の論文完成につなげてゆきたい。 ただ、現時点では日韓の間の往来がほぼ不可能な状態が長期化しているので、計画通りに進行するかはまだ未知数である。 現時点ではまず、手元の史料で行える水経表の完成から行ってゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に実施予定であった韓国漢江流域における現地調査が、新型コロナウイルスによる入国制限にかかったこと、また同様に、3月に予定していた日本地理学会の発表(専修大学)が中止になったことにより、次年度使用が生じた。両者とも、コロナ禍の収束次第再開を予定しており、調査旅費や学会参加費、まあその旅費等にあてる。
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