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2019 年度 実施状況報告書

「日本人の教会」をこえて:カトリック教会のフィリピン人など外国籍信徒に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 19K01206
研究機関上智大学

研究代表者

寺田 勇文  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (20150550)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードカトリック教会 / フィリピン人 / ベトナム人 / 移住者 / 宗教
研究実績の概要

本研究では日本のローマ・カトリック教会における外国籍の信徒、とくにフィリピン人、ベトナム人等がおかれている状況について、フィールド調査、参与観察、インタビューおよび新聞、教会関係の機関誌等の分析を通して明らかにすることを目的としている。
初年度には、まず以前より継続しているカトリック仙台教区のフィリピン人信徒についての調査を整理した。とくに大船渡教会におけるフィリピン人信徒と日本人信徒のかかわり、2011年3月11日の東日本大震災以後の状況について、フィリピン人信徒、日本人信徒、さらに同教会で3年数ヶ月、主任司祭を務めたフィリピン人司祭らによる口頭報告、問題提起、さらに討論を含む記録を編集し、上智大学アジア文化研究所のモノグラフ(『フィリピン出身者を迎えいれて:3/11被災後のカトリック大船渡教会を中心に』)として刊行した。
東北地方においても最近、若い世代のベトナム人がカトリック教会のミサに出席するようになった。これらのベトナム人の多くは技能実習生として来日した人たちである。仙台教区のある教会では、日本人、フィリピン人、ベトナム人が日本語ミサに出席し、日本語で主の祈りを唱えたあと、タガログ語、つづいてベトナム語でも主の祈りを歌うという、新しいスタイルが見られるようになった。東京教区、さいたま教区等ではベトナム人神父によるベトナム語のミサが行われているが、ベトナム語ミサに出席できない地域では、こうした新しいスタイルが今後、各地で導入される可能性がある。ベトナム語のミサとベトナム人の出席状況については、さいたま教区の複数の教会で調査を開始した。
成果については、フィリピンで開催された東南アジア日本研究学会で、太平洋戦争期の東京のカトリック教会におけるフィリピン人共同体について報告をおこなった。その他の論考等については、刊行物に記した通りである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、主としてフィリピン人、ベトナム人など日本に在住する外国籍のカトリック信徒が日本のローマ・カトリック教会の活動にいかに参加しているか、さらに日本人信徒を中心に運営されてきた教会がどのように外国籍の信徒を迎えいれるかについて検討しようとしている。
2009年6月現在の在住外国人は2,829,416人(法務省統計)で、国籍別に多い順に中国 786,241人、韓国 451,543人、ベトナム 371,755人、フィリピン 277,409人、ブラジル 206,886人となる。ベトナム人はここ数年急激に増加した。ベトナム本国では国民の8%、フィリピンでは83%、ブラジルでは70%がカトリック信徒である。ベトナム人は都道府県別では埼玉県(25,792人)、千葉県(20,389人)、東京都(38,630人)、神奈川県(22,459人)、愛知県(36,729人)、大阪府(30,131人)となり、首都圏、名古屋、大阪に多い。フィリピン人の場合も首都圏、愛知県に多い。
ベトナム人については東京都、埼玉県で、フィリピン人はそれらに加えて岩手県、福島県、山形県の教会で、ミサ(日本語、英語、タガログ語、ベトナム語など)、教会活動、日本人信徒との関係などの調査を進めた。大多数のベトナム人は20代の男女であり、技能実習生または日本語学校留学者で、東京と埼玉のいくつかの教会では多数のミサ出席者がみられる。ベトナム語ミサはベトナム人司祭、同修道女により準備されており、信徒が特定の教会のメンバーとして活動することはまだほとんど見られず、日本人信徒との接触も限定的である。
フィリピン人、とくに女性のなかには日本人と結婚し、地域に根付いて生活している人たちが多く、日本語ミサに出席しているケースも少なくなく、日本人信徒との交流も進んでいることが理解された。

今後の研究の推進方策

2020年1月以後、新型コロナウイルス問題がおこり、2月下旬以後、現在に至るまで国内のカトリック教区の多くでは公開ミサが中止となっている。2020年4月5日に始まる聖週間、4月12日の復活祭など重要な教会行事もすべて中止された。そのかわりに東京教区では毎日曜日、WEB上でミサが公開され、数千人が視聴しているが、日本語のため外国籍信徒の多くは視聴していないと推測される。こうした状況下で2月初め以後、各地の教会における調査、観察、インタビューはできなった。
今年度(第2年度)の秋以後、事情が許せばフィールド調査を再開する計画である。あるいはオンラインでのインタビュー、教区や各教会の機関誌等の分析を進めることにしたい。また、最近、東京教区、さいたま教区、大阪教区、新潟教区など外国籍信徒が多い教区では、日本人だけでなく外国からの移住者とともに教会共同体を築こうと教区長(司教)らが積極的に発言をつづけており、そうした側面にも注目したい。
2020年度の学会発表、とくに国際学会は、コロナウイルス問題を理由に中止、または延期された。2020年7月に予定されていたAsian Studies Conference in Japanでは、日本のカトリック教会における外国籍信徒について3件の発表からなるパネルを申請し受理されたが、学会は中止となった。

次年度使用額が生じた理由

2020年3月に予定していた国内における調査のための出張が、新型コロナウイルス問題により中止せざるをえなかった。新年度、国内での県境を越えた移動が可能になり、安全が確認された段階で、調査のための出張を実施する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] フィリピン出身者を迎えいれて:3/11被災後のカトリック大船渡教会を中心に2019

    • 著者名/発表者名
      寺田勇文(編)
    • 雑誌名

      上智大学アジア文化研究所Occasional Papers

      巻: 26 ページ: 1-48

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 岩手・大船渡 フィリピン人と日本人、入り交じる教会2019

    • 著者名/発表者名
      寺田勇文
    • 雑誌名

      カトリック新聞(2019年6月23日)

      巻: なし ページ: 1

  • [雑誌論文] フォークカトリシズム2019

    • 著者名/発表者名
      寺田勇文
    • 雑誌名

      東南アジア文化事典(丸善出版)

      巻: なし ページ: 220-221

  • [学会発表] A Wartime Filipino Community in Tokyo, 1943-44: The Case of Kojimachi Catholic Church2020

    • 著者名/発表者名
      TERADA, Takefumi
    • 学会等名
      The 18th Annual Conference on Japanese Studies (Davao, Philippines)
    • 国際学会
  • [図書] 世界のくらし フィリピン2020

    • 著者名/発表者名
      関根淳(執筆)、寺田勇文(監修)
    • 総ページ数
      48
    • 出版者
      ポプラ社
    • ISBN
      9784591165263

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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