本研究は日本のローマ・カトリック教会におけるフィリピン人などの外国籍信徒が、日本(人)の教会とどのような関係を築きつつあるかを、実地調査、インタビューを通じて明らかにする試みである。 とくに在日フィリピン人のカトリック教会との関係について、カトリック東京教区のフィリピン共同体、2011年の東日本大震災以後の東北におけるフィリピン共同体の誕生と活動に注目した。東京教区では、教会により事情は異なるが、フィリピン人、ブラジル人などが日本人とともに教会活動の重要な担い手となっているケースが少なくない。同時に個別の教会を越えてフィリピン人信徒による独自の活動も展開されている。その一例として、コロナ渦のなかで始められた毎夜のインターネット上でのロザリオの祈りがあげられ、現在も続けられている。 東北地方太平洋沿岸部では、2011年11月から「カトリック仙台教区滞日外国人支援センター」が、フィリピン人など東日本大震災被災地の外国人の支援活動を展開した。同センターのインドネシア人とフィリピン人の司祭は、3年以上にわたり青森県から福島県まで10数カ所のカトリック教会等を定期的に巡り、被災者支援、外国籍信徒のケア、在地の教会の日本人信徒との連携を構築、強化した。同支援センターについては、昨年度につづき関係者のインタビュー、資料調査を実施した。 日本のカトリック教会、とくに地方では日本人信徒の高齢化が顕著である。若い世代の信者も少ない。どの教区でも司祭数が減少しつつあり、教区によっては毎週、各教会でミサを行うことができなくなっている。教会の維持が困難なケースも少なくない。そうしたなかで外国籍信徒、とりわけ全国各地で暮らしているフィリピン人とその家族が、これまで日本人中心だった教会に徐々にではあるが、参加するようになりつつある。多文化、多国籍の教会を築いていくことが現在の課題とされている。
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