研究課題/領域番号 |
19K01208
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山本 真鳥 法政大学, 経済学部, 教授 (20174815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歴史人類学 / 植民地主義 / オセアニア / 年季契約労働 / 奴隷 / サモア / 中国人 / メラネシア人 |
研究実績の概要 |
海外研究機関への渡航がほぼ不可能であるため、研究計画の遂行がなかなか難しい。ある程度必要文献に関するデータベースを整え、文献調査を充実させていくことしかできない。 オセアニア全体の主として非白人の人口移動の流れを追う作業をした。非白人移住者の動向を解くカギは、奴隷制廃止の流れの中で発達した年季契約労働という制度にある。1)まず、域外での開発に伴い域内から域外への労働者の移動があった。19世紀前半のペルーの鉱山等での開発、19世紀後半のオーストラリア・クイーンズランドでのサトウキビ・プランテーションの開発に、域内の人々が連れられていくということがあった。彼らは、明かに禁じられた奴隷貿易的手段で連れて行かれる場合もあり、また年季契約という概念がわからないまま、形ばかりのサインをして連れて行かれることもあったが、クイーンズランドの場合、後年にはメラネシア地域からの自主的なリピーターも増えていった。2)19世紀終盤、域内でのプランテーション開発により、ソロモン諸島などからの移動も増えていく。3)しかし、域内だけで労働力を賄うことが次第に難しくなり、フィジーにはインドから、サモアには中国から、またハワイには様々な国から年季契約労働者を迎える結果となった。ハワイの年季契約労働は20世紀になる頃、廃止されたが、フィジー、サモアは20世紀にも継続した。 このオセアニア全体の人口移動の鳥瞰図的な議論は、3月に行われた日本オセアニア学会研究大会にて発表した。現在論文として執筆中である。 その他、速報としてウェブマガジンで、関連する記事を続報中である。2021年3月末現在17回を数え、20年度には7本を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスのために、海外渡航計画が全く遂行できず、そのために資料収集が遅れている。また国内の移動も緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などが繰り返されているために、移動や調べ物が自由に行えない環境である。特に、国立古文書館での文献調査を当てにしていたニュージーランド、フィールド調査予定のサモアは、外国人の入国をシャットアウトしている状況である。おそらく、ワクチン接種が進む2021年度後半までは、先が見通せない状況と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1)文献収集(図書、雑誌論文)、データベース化作業を継続する。とりあえず、国内で行える基礎研究をしっかり行う。海外からのデータの取り寄せ可能性も追求する。 2)非白人の人口移動を鳥瞰する論文(学会での口頭発表を論文にしたもの)を早期に完成させる。 以下の計画の可能性は、コロナ蔓延の状況、ワクチン接種の動向を見極める必要がある。 3)国立民族学博物館に出張して文献調査を行う。 4)ニュージーランド・ウェリントンの古文書館に、サモアの年季契約労働者に関する資料を探すために出張する。この調査が可能でない場合に、アメリカ合衆国ハワイ州のハワイ大学図書館、ハワイ州立公文書館などへ出張して調査する可能性も考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献研究のための海外出張が可能になったら、直ちに遂行するつもりである。出張期間は2週間程度を2回(ニュージーランド)、1週間程度のハワイ出張を1回計画していたが、その分が遂行できないでいる。また、当初は、本年もニュージーランドで文書研究を行うと同時にサモアを訪問する予定となっていた。これらすべてをどのように消化するかは、今後コロナ禍の終息を見極めつつ、あらたに計画の練り直しとなる。幸い、3月末に定年となったので、海外出張に出る日程は比較的自由に決めることができ、軌道修正は可能と考えている。
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備考 |
同様に、「第11回 トロブリアンド諸島の謎」、「第15回 オセアニア・アート」、「第16回 オセアニアの現代アート」。7月、9月、11月、12月、3月は休刊。植民地時代の残滓を深く宿すオセアニアの文化を明かとする。書籍化を視野に入れている。
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