研究課題/領域番号 |
19K01209
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大橋 健一 立教大学, 観光学部, 教授 (70269281)
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研究分担者 |
和崎 春日 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40230940)
長坂 康代 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (00639099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市人類学 / 移動 / 場所 / ベトナム / グローバル化 / 越境 |
研究実績の概要 |
グローバル化の進む現代社会における移動の加速化・常態化とそれに伴う越境的な生活圏の多方向的な拡大がもたらす諸問題に対する民衆的生活戦略が生み出す文化創造の実態を、「移動/定着」「グローバル/ローカル」が錯綜する「都市」という場において解明するため、研究の戦略的結節として設定したベトナムを中心に地球規模で展開する「移動」の実態に関するフィールド調査を多面的に実施した。 代表者・大橋は、ベトナム、タイ、ロシアにおいてフィールド調査・資料収集を実施し、旧ソ連の社会主義体制下において構築された移動の回路や文化を背景としながら現代的展開を見せるロシア人の観光移動と観光都市エンクレーブ形成の実態について知見を蓄積した。また、その成果の一部をロシアにおいて開催された国際会議において発表した。分担者・和崎は、ベトナムを中心に地球規模で展開する「移動」の実態を日本の都市・名古屋の大須という「場所」において調査し、その「場所」を取り巻く移動の地球規模での広がりのなかにベトナム人の移動を捉えると同時に、ベトナム人の日本への移動を促すメカニズムをベトナムにおいて調査した。また、調査から得られた知見をもとに「移動性」と「場所性」をめぐる理論化のための概念枠組の検討作業を行った。分担者・長坂も名古屋・大須をフィールドに「場所」を介したベトナム人の共同性について実態調査を行い、今後のベトナムでのフィールド調査の予備調査とするとともに、その成果からベトナムという共同性を超えた「場所」を介して展開する多文化的混淆性を解明した。また、その重要な一部を構成するパキスタン人を中心とするムスリムの動向をさらに新潟において調査した。 これらの調査研究作業を通して、本研究が解明すべき問題の焦点が具体的に検討され、明確化され、次年度以降の調査研究作業の見通しを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に掲げた現代社会のグローバル化に伴う移動の加速化・常態化と越境的生活圏の多方向的拡大がもたらす諸問題への民衆的文化創造の実態の解明という課題について、本年度は、ベトナム、タイ、ロシア、日本の各地で実施したフィールド調査によって具体的な多くの知見を蓄積することができたため、本研究はおおむね順調に進展していると認識している。 一部、当初の研究実施計画で予定した調査研究フィールドに加えて研究の進捗に応じてフィールドを追加したが、これは研究内容の深化を図るための措置であり、これによって研究課題に関するより詳細な研究成果の獲得が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度の調査研究から得られた成果を踏まえ、さらなる研究内容の深化を図るため、以下の調査研究を推進し、知見を蓄積する。 代表者・大橋は、本年度の研究成果を踏まえて、さらにベトナム・ニャチャンを結節とするロシア人を中心とした旧ソ連諸国との間の移動の実態を観光とそれを支える経済活動に着目して解明する。この移動の動向には中央アジアのムスリムも含まれており、この着目によって分担者が本年度の調査から発見したベトナムとムスリムとの接点という課題との連携・相互参照も意識したいと考えている。分担者・和崎は、本年度の名古屋・大須における調査の成果を踏まえ、引き続き大須を重要なフィールドとして位置付け、アフリカ人・ムスリム・ベトナム人の生活動態を調査するとともに、日本へのベトナム人移動者の移動の背景の解明、ベトナムにおける移動性と場所性の交叉状況の実態解明を行うためベトナムでの調査を実施する。分担者・長坂は、本年度の名古屋・大須における調査成果を踏まえて、移動者としてのベトナム人にとっての大須の「場所性」と他民族との接触・交渉の実態に関する調査をさらに継続するとともに、本年度の大須における予備調査を踏まえて、大須へのベトナム人移動者の出身地の社会文化状況に関する調査をベトナムで実施する。また、参照事例としてタイ・バンコクへのベトナム人移動者の共同性に関する調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者・長坂の担当するベトナムにおけるフィールド調査に関して、本年度はその予備調査を名古屋、新潟で実施することに注力し、その際、電子通信システムを用いたオンライン調査や勤務地周辺でのフィールド調査を実施したため、旅費の支出が不要であったため、本年度の未使用額を次年度に繰り越し、次年度に実施するベトナム及びタイにおける現地フィールド調査のさらなる充実を図るべく資金を有効に活用することにした。 上記を踏まえ、本年度に発生した次年度使用額は、次年度分請求助成金と合わせ、ベトナム及びタイにおけるフィールド調査の実施のために使用する計画である。
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