研究課題/領域番号 |
19K01215
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
真貝 理香 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (30758818)
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研究分担者 |
竹川 大介 北九州市立大学, 文学部, 教授 (10285455)
甘 靖超 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20789044)
スピーゲルバーグ マキシミリアン 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (30811301) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニホンミツバチ / 養蜂 / ドメスティケーション / 伝統養蜂 / 映像 / トウヨウミツバチ |
研究実績の概要 |
新型ウィルス拡大の影響で、本年度のフィールドワークは、県内の近隣地域にのみ限定せざるを得なかった。竹川:採蜜の取材と撮影(於:北九州市立大学。2020年7月。2021年3月)、巣箱作りの取材と撮影(於:門司。2021年1月)。甘:中部ニホンミツバチの会取材(2020年8月)。 その代わり、日本・周辺アジア諸国の、在来ミツバチ養蜂の文献調査や情報収集に注力した。 【文献調査】真貝:ニホンミツバチの歴史的文献調査および、「ニホンミツバチ養蜂文化ライブラリー(HP)」の情報拡充。特に明治期のセイヨウミツバチ導入後のニホンミツバチの養蜂状況について研究を進捗させた。甘:中国の在来種ミツバチの文献調査、スピーゲルバーグ:台湾の在来種ミツバチの飼育状況のネット上調査。ニホンミツバチ養蜂文化ライブラリー開設については反響が大きく、2件の新聞報道があった(2020年7月4日:京都新聞洛西版。7月11日:毎日新聞大阪版)。 【地域養蜂同好会との連携】北関東の一養蜂研究会のメンバーの方々のご協力により、春から秋にかけての巣箱設置状況と、蜂群の獲得・蜂群の逃去・消滅など、継続的なデータをいただきデータを集計した。特に逃去性はニホンミツバチの大きな特徴であり、当該エリア内での貴重なデータとなる。 【出版】現行の日本の蜜蜂飼育届が、都道府県ごとにフォーマットが異なり、セイヨウミツバチとニホンミツバチの区別なくデータが収集されていること等に関して、問題提起した論文、真貝・スピーゲルバーグ他(2020)「日本における養蜂の基礎データ収集の必要性」『畜産の研究』74(11)を発表。【研究情報交換】総合地球環境学研究所において、竹川および北九州市立大学学生、スピーゲルバーグ、真貝による、研究会を行った(2020年10月)。【アウトリーチ】日本在来種みつばちの会における招待講演(2021年3月)ほか、招待講演 1件。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【進捗がやや遅れた点】本研究課題は、山間地域でのニホンミツバチ伝統養蜂のフィールドワークと、映像撮影が核をなすものである。しかし本年度は、新型ウィルス感染拡大の状況下で、インフォーマントの多くが高齢であること、また山間地域居住という事情を鑑み、都市部に住む研究者は、近隣地域での調査のみに限定せざるを得なかった。そのため、当初予定していた各地のフィールドワークや、長野県での映像撮影は断念した。しかしそうした中でも、九州地区については北九州市近隣で、今後のフィルム製作・編集の素材となる映像を、複数撮影することができた。
尚、昨年度撮影・製作し、総合地球環境学研究所youtubeにアップロードした「古座川の伝統養蜂ー和歌山県古座川流域のニホンミツバチ養蜂」が、約1年間で日本語版:4万6千視聴。英語版:8千100視聴(2021年5月現在)と、高視聴数となっており、こうした伝統養蜂の詳細な映像が、研究者のみならず、養蜂家など、国内外の多くの人の興味の対象となっていることが認められたといえる。
【順調に進捗した点】文献調査については、当初の予定より多くの時間を注いだため、大きな進捗があった。欧米の畜産史において養蜂史はひとつのテーマとなっているが、日本においては従来、あまり積極的には研究されてこなかった。そのため、特にニホンミツバチの養蜂技術・ハチミツの生産・利用法に加えて、ミツロウに着眼した研究も開始した。また明治期のセイヨウミツバチ導入後は、徐々に衰退したと考えられてきたニホンミツバチの養蜂であるが、複数の文献やデータを入手し検証した結果、現在はニホンミツバチが自然環境下で生息していない北海道においても、少なくとも大正から昭和の第二次世界大戦前には、ニホンミツバチが「飼育」されていたことが判明した。この内容については、次年度以降に学会・論文発表を行う。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、新型ウィルスの収束の状況が見えない状況にあり、現地での調査・映像撮影が可能かどうかは不透明である。 1)現地でのフィールドワーク・撮影が可能な場合:九州、長野県(もしくは愛媛県)を中心とした地域の調査・フィルム作成を行う。現地調査が不可能であった場合:①できるかぎり、オンラインでのインタビューを行う。養蜂家が、高齢によりオンライン対応が難しい場合は、比較的若い養蜂家にインタビューをし、地域の養蜂状況の補完資料とする。②巣箱や養蜂道具については、写真や寸法などをメールで送付してもらい、それを題材としてオンライン取材することも、代替案として考える。 2)文献調査:引き続き、歴史史料・農業畜産データ・地域史(市史・県史など)から、ニホンミツバチの養蜂、ハチミツとミツロウの生産と流通・利用に関する資料を収集・分析する。 3)ニホンミツバチ伝統養蜂「研究会」の実施:本科研費研究メンバー以外の研究者・養蜂家も含めた研究会を実施し(対面もしくはオンライン)、養蜂史、養蜂技術や道具の地域性、人とミツバチの関わり・ドメスティケーション、また近隣アジア諸国のトウヨウミツバチ養蜂などの見地から、研究報告・意見交換を行う。 4)2019年度・2020年度の研究内容の論文化・学会発表。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大により、山間地域でのフィールドワーク・および映像撮影ができなかったため、当初の予定より、旅費を中心とした予算執行が少なくなった。次年度は感染拡大が収まったタイミングで、できるだけ調査を組み込むことができるように、柔軟な計画をたてる。
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備考 |
(1)「ニホンミツバチ養蜂文化ライブラリー」製作:2019年12月。2020年度は、内容拡充。 (2)「古座川の伝統養蜂」アップロード:2020年3月11日。視聴47,061回(2021年5月21日現在)。(3)「Traditional Japanese Honeybee Beekeeping in Kozagawa」アップロード:2020年4月7日。視聴8,376 回(2021年5月21日現在)。
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