研究課題/領域番号 |
19K01222
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 尚之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80361054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化人類学 / アフリカ / ナイジェリア / 移民・ディアスポラ / 王制・首長制 |
研究実績の概要 |
アフリカから東アジアへの移動は、21世紀に入り研究者の注目を集めるようになってきた。日本においても、アフリカ出身者の定住化と呼べる現象が進むとともに、彼らのネットワークの多様化が進んでいる。そうした状況を念頭におきつつ、本研究は西アフリカ・ナイジェリア出身のイボ人移民たちが、東アジアにおいて、故郷の文化を模して創設した王制について調査研究を行うことを目的とした。 2020年度については、新型コロナ感染拡大によって、海外渡航の自粛が求められたことで予定していた周辺国(中国や韓国)での調査が不可能となった。さらに、日本国内でイボ人たちが組織している団体の活動も休止していたことから、予定していたフィールドワークを行うことができなかった。そのため、本年度においては、過去に収集したデータの再分析を行うとともに、国内で活動するイボ人たちの民族団体のなかでも、特に民族の独立を掲げた団体に対して可能な範囲の調査を行った。 1999年の民主化以降、ナイジェリアにおいては、国内の諸民族による権利主張や抗議圧胴が盛んとなっている。一部のイボ人たちによるビアフラ共和国の独立を求める運動もその一つである。特に2010年代に入って設立された団体は、海外在住のイボ人ディアスポラが中心となっており、現在は日本にも拠点が存在する。運動の参加者たちへの聞き取りによれば、王位や首長位が、民族独立運動の展開において一定の役割を果たしていることが明らかとなった。王制や首長制が運動の歴史語りに登場するとともに、王位や首長位が運動の指導者に正統性を与える文化資本として用いられているのである。今後もこの点に注目し、引き続き調査を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、日本および周辺国におけるフィールドワークを主な研究方法としている。しかし新型コロナウイルスの感染拡大とともに、海外渡航の自粛が求められ、周辺国における調査を実施することが不可能であった。また、首都圏内での移動の自粛が求められるとともに、在日イボ人たちの諸団体も活動を自粛していた。そのため、十分な調査を行うことが不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、2021年度も継続するものと予想される。そのため、当初の研究計画を修正し、基本的に国内のイボ人コミュニティを対象とした研究に切りかえる方針である。2020年度に引き続き、在日イボ人ネットワークの多様化を念頭に、様々な団体において王制・首長制の影響について調査研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
もともと予算の多くを、フィールドワーク用の旅費として使う予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外および国内の移動の自粛が求められた結果、旅費を使うことなく、繰り越す結果となった。この状況については本年度も継続することが予想されるが、万が一調査が可能となった場合に備え、旅費として保留したい。
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