研究課題/領域番号 |
19K01222
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 尚之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80361054)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 文化人類学 / ナイジェリア / アフリカ / 移民・ディアスポラ / 王制・首長制 / 民族団体 |
研究実績の概要 |
計画立案当初の予定通りに調査研究を進めることが不可能であり、計画の修正を余儀なくされた。2022年度には、日本およびナイジェリアにおいて水際対策が緩和されたことを受け、はれて2022年9月にナイジェリアにおけるフィールドワークを再開することができた。 また、国内のフィールドワークにおいても、在日イボ人たちが組織する諸団体のなかには、対面での集会や年中行事を再開するものもあり、調査に一定の進捗がみられた。2022年5月には、民族独立を目指す政治団体が主催する行事に参加し、メンバーに対し聞き取り調査を行った。加えて、別の民族団体が年に4回行う対面での集会のうち二回に参加した。そのうちの一回は故郷の伝統行事を模したイベントとして開催された。同イベントには、首長位の称号を持つ人々も多く参加しており、改めてイボ人移民社会における王位・首長位の象徴的価値について考察する機会となった。加えて、イボ人移民の指導者であり、首長位の称号を持つ者の一人が2023年2月に予定された大統領選挙に立候補するとの話があり、海外に暮らす移民と故国の政治的関わりを知る貴重な機会となった。 加えて、文献研究においては、2021年度に引き続き、移民・ディアスポラ研究のレビューを行った。特に、デジタルメディアが、移民たちのアイデンティティや政治活動に与える影響について、過去の研究を確認した。今後は、それら過去の研究をふまえつつ、移民王制を含めた在日イボ人諸団体の調査を進めていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度、2021年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた結果、研究計画立案当初の予定通りに調査研究を進めることが不可能であり、計画の修正を余儀なくされた。そのため、2023年度への再度の繰越を申請した。 その一方で、2022年度には、日本およびナイジェリアにおいて水際対策が緩和されたことを受け、はれて2022年9月にナイジェリアにおけるフィールドワークを再開することができた。調査と関わる大学やインフォーマントと再開を果たし、今後の計画について協議した。2023年度には改めてナイジェリアに渡航するとともに、当初予定していた調査を行いたい。 また、2022年度には国内においても調査対象であるイボ人諸団体が対面による活動を再開した。申請者も調査を再開し、対面の集会やイベントでの参与観察、聞き取り調査を行った。今後は、関西における擬制的王制の展開を確認すべく、調査を行う予定である。 総じて2022年度は、調査を再開し一定の進捗がみられたものの、十分な成果を得ることができぬままに終えることとなった。そのため、本年度をもって終了の予定であった本研究課題について、補助事業期間延長承認申請を行い、認められた。2023年度には、研究の遅れを取り戻すよう努めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度までを研究期間とした本研究課題は、新型コロナウイルスの感染拡大によって研究の進捗に遅れが生じたことから、2023年度まで補助事業期間延長承認申請を行った。 2023年度には、2022年度に引き続き、ナイジェリアにおける調査を敢行し、調査研究の遅れを取り戻したいと考えている。当初の予定にあったエヌグ州の国立図書館やナイジェリア大学図書館において王制・首長制と関わる過去の文献資料を収集するとともに、ナイジェリア国内市場に流通する雑誌や書籍、さらには映像資料の収集・分析を行う。それによって、アフリカ国内外で流通する「アフリカの王」の心象を考察する。 加えて2022年度に再開を果たした、日本国内におけるイボ人諸団体のフィールドワークも継続して行う。特に2023年度には、関西のイボ人移民の王(Igwe Osaka)を中心としたネットワークの調査を行う予定である。大阪を拠点とした同郷団体のメンバーに改めてコンタクトを取り、移民王制の位置づけについて聞き取り調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、ナイジェリアおよび日本・東アジア諸国におけるフィールドワークを主な研究方法としている。2020年度から2021年度においては、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として、海外渡航の制限が続いた。その結果、予定していたナイジェリアおよび中国における調査を実施することが不可能となった。さらに、国内においても移動の自粛が推奨されていた。 2022年度には、日本およびナイジェリアにおいて水際対策が緩和された。そのため、日本国内およびナイジェリアにおけるフィールドワークを再開することができた。しかしながら、2年間続いた渡航自粛期間の遅れを取り戻すには至らなかった。そのため、2023年度には2022年度に引き続き、日本国内およびナイジェリアにおけるフィールドワークを実施し、調査研究の遅れを取り戻すよう努めたい。
|