研究課題/領域番号 |
19K01224
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 毅 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00454116)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 沖縄 / 医療人類学 / 子ども / 軍事環境 / 沖縄戦 |
研究実績の概要 |
2021年度中に沖縄での調査を予定していたが、年度内にコロナウィルスの感染拡大が第4波、第5波、第6波と続き、現地調査を行うことができなかった。本研究のインフォーマントの中心が高齢者であることもあり、必然的に調査ができない状況を受け入れざるを得ず、その分、情報収集や文献研究によって研究を進めた。とはいえ、全体として研究の進捗が遅れていることは否めない。 研究成果として特筆すべきは、2021年10月9日に行われた第6回「日本における第二次世界大戦の長期的影響に関する学際シンポジウム」において、指定発言者として報告したことである。同報告では、「沈黙の共謀 the conspiracy of silence」(Yael Danieli)という概念を参照しつつ、沖縄における精神保健の専門家の「沈黙の共謀」について、医療人類学的な検討を加えた。「沈黙の共謀」とは、社会がホロコーストの生存者やその家族の体験を無視したり否定したりすることで、当事者が暗に促された沈黙を意味するが、沖縄でも、戦後、社会のさまざまなレベルで「沈黙の共謀」があったことを報告した。 ポスト・コンフリクトの社会では、戦争中の加害や被害の記憶が複雑に絡み合って、家族やコミュニティの中に「沈黙の共謀」が張り巡らされている。家族の中の沈黙、秘密、謎、ナラティヴの空白こそが、家族の機能不全をもたらし、次世代をアイデンティティ危機に陥れると指摘した海外の研究は多く、それらの先行研究を幅広く検討した上で、沖縄における「沈黙の共謀」の内実を明らかにしたことが、当該年度の研究で得られた重要な知見といえる。以上の研究成果は、次年度に論文としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度中に沖縄での調査を予定していたが、年度内にコロナウィルスの感染拡大が第4波、第5波、第6波と続き、現地調査を行うことができなかった。その分、情報収集や文献研究によって研究を進めることができたとはいえ、全体として研究の進捗が遅れていることは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、沖縄現地での調査を実施したい。しかし、この報告書を書いている時点でも、沖縄は、人口10万人当たり新規陽性者数が全国ワースト1の状況にあり、依然として厳しい状況にある。調査が必要最小限しかできない可能性もあり、当面、理論的文献の検討や収集資料の分析に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に沖縄での調査を予定していたが、コロナウイルスの感染拡大が続いていたため、現地調査を断念した。そのため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、来年度中に実施予定の沖縄での調査に充てる計画である。もし、現地調査の縮小や中止を余儀なくされた場合は、研究書や資料の購入に充てたい。
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