研究課題/領域番号 |
19K01224
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 毅 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (00454116)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 沖縄 / 医療人類学 / 子ども / 軍事環境 / 沖縄戦 |
研究実績の概要 |
2022年度前半に沖縄での現地調査を予定していたが、インフォーマントの多くが高齢者ということもあり、コロナウィルスの感染拡大が続く中で、当該年度後半に延期した。その間、これまでに収集した史資料の解析に努め、海外の事例との比較検討を行った。また、22年8月7日に東京都武蔵村山市で開催された「PTSDの日本兵と家族の思いと願い証言集会」において当事者と交流する機会を得て、「戦争トラウマ」の世代間伝達についての知見を深めることができたことは大きな成果であった。同集会後の記者会見における研究代表者の発言は、同年8月17日付の『毎日新聞』にコメントとして掲載された。23年3月には、西宮市で開催された当事者の交流会に参加し、戦争が家族関係に与えた影響を当事者の視点から考えるための多くの示唆を得た。世代を超えた戦争の影響をめぐるこの問題は、『文化人類学』に寄稿した2本の論文として派生的な研究展開を辿ったが、これは、当初予期していなかった本研究課題の副次的な成果といえる。 2022年10月から12月の間、研究代表者が介護休業を取得したため、その間の中断を余儀なくされたが、復職後の翌年3月に沖縄での現地調査が実現し、当事者・関係者への聞き取りや現地文書館での資料収集を実施することができた。中でも、少年兵として沖縄戦に動員され、戦後、精神的後遺症に苦しんだ当事者に長時間の聞き取りを行うことができたことは有意義であった。 コロナ禍にあったこの数年間、沖縄での調査を実施することができなかったうえに、研究代表者が育児休業と介護休業を取得していた期間がトータルで1年程あったため、予定通りに研究を遂行することが難しかった。社会的な状況と個人的な事情が重なり、全体として研究の進捗が遅れていることは否めない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度内に複数回の沖縄調査を実施することで、これまでの研究の遅れを取り戻すことを計画していたが、コロナウィルス感染症の影響が長引き、1度しか現地調査を行うことができなかった。その分、収集したデータを精査し、理論的な検討を深めることができたとはいえ、特にアウトプットの面においてやや停滞しており、課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに研究が進まなかったため、研究期間を1年間延長することとし、次年度でこれまでの研究成果をまとめ、アウトプットに努める。具体的には、学術書(分担執筆)や一般向けの共著の刊行、ならびに、一般市民対象の講演会などを通して、幅広く研究成果を公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間を延長したため、若干の次年度使用額が生じた。次年度前半に使用する予定である。
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