研究課題/領域番号 |
19K01226
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関 恒樹 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (30346530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会開発 / 市民社会 / ジェントリフィケーション / 統治性 / ネオリベラリズム / 貧困 / 社会的つながり / フィリピン |
研究実績の概要 |
2019年度は、本研究課題の初年度でもあり、基本文献を渉猟し、理論的視覚の明確化、研究テーマの絞り込みを行った。さらに9月に、フィリピン・マニラ首都圏にて予備的な現地調査を行った。ジェントリフィケーションが進展する今日のマニラ首都圏において、スラムの再定住を中心にした貧困層の居住と生活の確保・保障を担うNGOを訪問し、現在進行中の活動についてインタビューを行った。同時に活動のサイトを実際に訪問し、現状を把握するとともに、移転の対象となっている貧困層住民にもインタビューを行った。グローバルサウスの都市に共通する現象として、ジェントリフィケーションとスラム移転による「郊外化」が指摘できる。郊外の再定住地に移転した住民へのインタビューも行い、居住環境の変化にともなう住民間の様々な問題について、聞き取り調査を行った。これらの現地調査の意義は、住民の生活保障提供において、国家の役割が縮小する中で、住民と市民社会組織の協働によって、いかなる新たな共同性や社会的つながりが生まれてきているのかが明らかになることである。本研究は、グローバリゼーションと新自由主義的潮流の中で、これまで国家によって担われてきた福祉や社会的保護が、次第に市場化されていくなかで、不確実性やリスクが増大する人々の生活を支える社会性、つながりを生み出すアクターに関する民族誌的資料を提供することを意図している。また、2019年11月にはカナダ・バンクーバーで開催されたアメリカ人類学会にて、東アジアの貧困の統治とその変容に関する研究パネルに参加し、上記フィリピンにおける調査の途中経過を報告する機会を得た。様々な研究者から有意義なコメントをもらい、次年度以降の発展への示唆を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備調査は概ね順調に予定通り進み、次年度以降のより集約的な本調査の準備が整いつつある。調査地フィリピンにおける調査協力者、調査対象者、団体とのネットワーク作りも順調である。国際会議でも発表し、今後の見通しを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、フィリピン・マニラ首都圏での現地調査を継続する予定である。より集約的な調査、資料収集を目指す。引き続き、国内外学会での学会発表を行う予定である。
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