研究課題/領域番号 |
19K01228
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阿部 哲 神戸大学, 国際人間科学部, 助教 (90732660)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 実践理論 / 世俗化・世俗主義 / 公共性 / 宗教社会学 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に調査地やオンライン媒体で入手した文献資料をもとに環境分野におけるイスラーム伝統のあり方について研究を進めた。特に、これまで科学知が大きく概念枠組みを規定してきた環境分野へのイスラーム法学者・専門家による知的貢献のあり方について研鑽し、現代社会におけるイスラーム伝統の多様性に関して示唆を得ることができた。その過程で、イスラーム伝統における身体技法の重要性について新たな知見を学び、本課題研究を継続・展開していく上で有用であった。本年度の終盤に、イラン国内の情勢が内的・外的要因により不安定化したため、調査計画の変更を余儀なくされたが、来年度以降に調査を継続していくための基礎固めはある程度できたと考える。 本年度の研究成果は、論考(日本語・英語)を通して広く社会に発信できた。また、国内外の複数分野の研究者と国際研究会議に参加し、「近代化と宗教」について多角的に議論を重ね、異文化コンテクストにおける宗教の変容、意義、多様性について理解を深めた。近代化のテーマのもと、イスラーム伝統を相対化して比較考察できたことは、来年度以降にイスラームの多様性について研究していく上で収穫があった。来年度は、蓄積したデータを整理・分析する作業の一環として、セミナー(あるいはシンポジウム)形式で研究会議の開催を目指し、互いの研究成果を共有することを通してイスラームの多様性に関する見地をさらに広げていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イランを取り巻く国際情勢の緊張の高まりやイラン国内における新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、調査計画の変更を強いられたために、研究の進捗はやや遅れている。今後は、主にオンライン媒体を通して関連情報の収集、整理を継続し、調査地で入手した文献資料の研究を進めながら、現地の状況を見極めた上で、適切な時期にフィールド調査を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度における主要な目標は、イランで現地調査を実施し、イスラーム知に基づいた環境啓発の実践に関するデータを収集することである。既存の研究資料を活用して現代社会におけるイスラーム伝統についての見識を深める一方で、関係者と連携を取り合いながら、臨機応変に調査に向けた準備を進めていく。さらには、環境問題を切り口として、科学知が中心的に概念枠を形成する諸分野におけるイスラーム伝統の貢献についても、オンライン媒体を通して最新情報を蓄積したい。 下半期には、蓄積されたデータの整理を兼ねる意味で、中間報告会を国内外の研究者とセミナー形式(あるいはシンポジウム形式)で開催し、研究成果を発信予定である。また、研究の視野を広げることを目的に、単著論文と共に、学際的な共著論文の執筆に取り組み、広域的に研究成果を共有していくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究調査対象地域の政治情勢が不安定化したために、当初の調査計画(当該年度科研費使用計画)を変更をする必要に迫られた。来年度は適宜、研究対象地域で調査を実施し、当該年度科研費を使用することを計画している。
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